《とにかくテレビ局の人々は番組の制作能力が異常に高い。もう、類するものがないほど高い。ニュース素材についても同じことが言えるし、やっぱりクオリティの高いコンテンツをつくっていくことができるので》(出典:logmi『藤田晋氏「麻雀も経営も大半は我慢の時間」エンタメ領域に狙いを定めた、サイバーエージェントの戦略』

 つまり、地上波テレビ局で働くということは、「旧メディアに入ること」ではなく、「映像産業でグローバルに通用するスキルを習得する訓練の場」と捉えることもできる。

フジテレビという現場の強みと課題

「いや、映像制作に興味があるならば、民間の制作会社に入ればよいのではないか」という向きもあるかもしれない。確かに、制作だけに限ればそう言うこともできるだろう。しかし、フジテレビのような放送局では、数百人を動かす全国規模の大型案件のマネジメント、出演者や広告代理店、行政まで巻き込んだ交渉、そして放送権をめぐる国際連携など、総合的な経験を積める可能性がある。

もし今、わが子が「フジテレビに入社したい」と言ったらどうする?→入社2年目でリクルート事件を経験した筆者の“意外なアドバイス”2014年、人気番組だった「笑っていいとも!」に出演するため、スタジオアルタに入る安倍晋三元首相 Photo:JIJI

 フジテレビはかつて「月9」ドラマや大型バラエティ、スポーツ中継などを牽引した映像表現の最先端にいた。現在でもスタジオ設備や制作技術には厚みがあり、現場で得られるノウハウや人脈は貴重である。もちろんこうした番組のコンテンツのアーカイヴ自体が大きな資産であり、それを活用できる(前出の藤田氏は、同じ記事の中で、テレビ朝日が持つ膨大なコンテンツは協業の理由ではなかったと述べているが)。

 さらに、過去の成功モデルが通用しない今、新たなチャレンジが求められている。構造的に厳しい中にあっても、自ら手を動かして現場を動かす人にとっては、むしろ面白い局面と言えるかもしれない。