Russia’s war machine:
ロシアの戦争マシン

欧米による経済制裁や原油価格の低迷を背景に、ウクライナへの軍事侵攻を支えてきた「ロシアの戦争マシン(Russia’s war machine)」が変調を来し始めているようだ。
「戦争マシン」とは、ロシアの石油・ガス業界のことだ。国家財政の3分の1、輸出の6割以上をたたき出しており、ロシア戦時経済(wartime economy)の要になっている。ここが揺らげば、プーチン大統領が推し進める戦争の継続も難しくなる。
今年に入って業界全体は大幅な赤字に転落。ウクライナ政府の戦略コミュニケーション・情報セキュリティーセンター(CSCIS)の調べでは、第1四半期(1~3月)の赤字は40億ドル(約5800億円)に上り、前年同期の黒字(40億ドル)から様変わりした。
象徴的なのは、「プーチンの隠し財布(Putin’s hidden wallet)」と呼ばれる石油大手スルグトネフテガス。第1四半期に4397億ルーブル(約8100億円)の損失を計上し、過去数十年で最悪の経営状況に陥った(前年同期は2685億ルーブルの利益)。
ウクライナ系ニュースサイト「キエフ・インサイダー」によれば、スルグトネフテガスが保有する外貨(hard currency)は多額に上り、必要に応じて政府に吸い上げられてきた。バランスシート(貸借対照表)上の流動資産は2023年末時点で外貨を中心に5兆9000億ルーブル(約11兆円)に達していたが、今では非開示となっている。