
一時の希望が消えた
ウクライナ停戦協議
2025年1月に就任したトランプ大統領は、ウクライナ戦争の早期停戦を標榜(ひょうぼう)し、積極的な外交に乗り出した。2月12日には米露首脳および米ウクライナ首脳による電話会談が実施され、停戦協議の開始が合意された。さらに、2月18日には米露高官間で停戦チームの立ち上げや、人員が縮小されていた両国の大使館の回復などについても合意に至る。 3月19日には、ロシア・ウクライナ双方が30日間のエネルギーインフラ施設に対する攻撃停止に合意し、この頃には、停戦への期待が大きく膨らんでいた。
4月に入ると、米露間の交渉に具体的な成果が見られなくなり、停戦の期待は徐々に後退していく。停戦交渉がうまくいかない中で、トランプ政権が4月20日のイースターの前に仲介の「最終提案」を作成し双方に迫ると、再び停戦期待が高まった。しかし、この「最終提案」は、ウクライナ領土のロシア化を黙認するなど、ロシア寄りの内容であったこともあり、ウクライナにとっては到底認められるものでなく、トランプ大統領の目指したイースター停戦は失敗に終わった。
5月以降は、5月16日に約3年ぶりのロシア・ウクライナの直接交渉が開催されるなど、一時的に停戦への期待が高まる場面もあったが、直接交渉でも前向きな成果はほとんどなく、停戦の先行きは再び不透明になっている。
確かに停戦協議の開始自体は、この3年間なかったことではあるが、停戦協議で明らかになったのは、むしろその合意の困難さであった。