相手から、詳細な情報を得たい場合は、「YES」「NO」で答えられる質問ではなく「何に取り組みましたか?」「どうすれば解決できるでしょう?」という具合に、What、Howなどの疑問符を使う質問文を作ると、具体的な答えが返ってきます。

 ただ、質問された部下が上辺でしか答えない場合もあります。その際は、一問一答形式ではなく、「他には何がありますか?」「もっと詳しく教えてください」など、掘り下げる質問を投げかけてください。3回程度掘り下げれば、相手の本音が聞こえてきます。

部下のエンジンがフル稼働する
「心のご褒美」の渡し方

 アメリカ大リーグで、2024年のワールドシリーズを制したのは、大谷翔平選手が活躍するロサンゼルス・ドジャースでした。かなり前の話ですが、日本人として同じようにドジャースで大活躍をした野茂英雄選手が在籍していた、当時のチームを率いていたのはラソーダ監督でした。彼は20世紀最高と称される名監督です。

 スポーツの監督は一部を除き、自分ではプレーしません。試合中は選手たちに任せるほかありませんし、任せ方によって勝敗が決まると言っても過言ではないでしょう。

 ラソーダ監督の任せ方は秀逸でした。チームでプレーをする選手たちのことを日々観察したり、会話をしたりして気づいたことを、ノートにメモして、個別対応のマネジメントを行なっていたのです。このノートはラソーダメモと呼ばれています。

書影『リーダーの任せる技術』(あさ出版)『リーダーの任せる技術』(あさ出版)
岡本文宏 著

 とくに重要なのが「褒める」ことです。たとえば、A選手がファインプレーをしたときに、「○○○」と褒めればモチベーションが上がると分かれば、その褒め言葉をメモしておいて、実際にその言葉を使って選手を褒めるのです。そうすれば、選手のモチベーションがアップして、その後、気持ち良くプレーを続けられます。

 かつて私がセブンイレブンのFC店を経営していたときに、30人ほどのスタッフの普段の様子を観察したり、雑談の中で得た情報をメモして記憶し、彼、彼女たちの特性を理解するように努めていました。メモを取るのは数分でできるので、手間暇は掛かりませんが効果は絶大でした。コミュニケーションが充実し、上下の関係性も良好となり、結果として、スムーズに仕事を任せることができるようになりました。

 任せたことが上手くできた時、メモに記入しているスタッフの一番喜ぶ褒め言葉を投げかければ、エンジンがフル稼働になります。そして「心のご褒美」を手渡されたスタッフは、次に任せられたことにも、しっかり取り組もうと思うようになります。

(メンタルチャージISC研究所代表取締役 岡本文宏)