
悪質な買い手企業の問題が明らかになった2024年5月以降、M&A仲介業界には強い逆風が吹いている。買い手企業の素性をろくに調べず、M&Aを仲介したケースが複数見られたからだ。では、具体的にM&A仲介業界にはどのような企業が存在するか。特集『M&A仲介 ダークサイド』の#11では、上場している仲介会社を中心に主要11社の特徴と規模が分かるカオスマップを作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
M&A仲介業界が一目瞭然
「カオスマップ2025」
M&A仲介業界は2024年5月まで、日本の産業界の課題である事業承継問題を解決へ導くキープレーヤーとして、期待と注目を集めていた。ところが、投資会社ルシアンホールディングス(HD)が引き起こした事件をきっかけに、化けの皮が剥がれることになった。
ルシアンHDは中小企業を買収して子会社化した後、その子会社から資金を抜き取ったり、経営者保証を外さなかったりする一方で、子会社の利益になることは一切せずに放置。買収された会社のうち数社は、その影響で倒産や事業停止に追い込まれてしまった。そんなルシアンHDが行ったM&Aに、複数のM&A仲介会社が関与していたことが判明したのだ。
同様の所業に及んでいたのは、ルシアンHDだけではなかった。ジョイワークやANEW Holdingsなど、似た手法で中小企業を食い物にする買い手企業について報道され、そのいずれも大手を含むM&A仲介会社が関与していたことが明らかになった。
M&A仲介会社がこうした悪質な買い手企業のM&Aに関与していた理由は明白だ。悪質な買い手企業は短期間で買収を繰り返すため、仲介を手掛ければ、それだけ成功報酬として仲介手数料が手に入るからだ。
株式譲渡契約で定められた事項を守らず、売り手企業のオーナーや従業員をないがしろにした悪質な買い手企業の責任が重大であることは論をまたない。しかし、そんな企業とのM&Aを仲介した仲介会社も、責任の一端があるのではないか――。こうしてM&A仲介業界は、存在意義を問われかねない状況となった。
業界団体のM&A支援機関協会(旧M&A仲介協会)は自主規制ルールを整備し、24年10月からは悪質な買い手企業の情報を集約・共有する「特定事業者リスト」の運用を始めるなど、大手を中心に自浄化策を推進している。
では具体的にM&A仲介業界の中心となっているのはどのような企業なのか。次ページで売上高などの規模と各社の歴史が一目で分かる「カオスマップ2025」を作成した。