ドイツ・メルツ首相ドイツ・メルツ首相 Photo:Pier Marco Tacca /gettyimages

23年からGDPマイナス成長
エネルギーのロシア、輸出は中国依存が裏目に

 就任約1カ月となったメルツ独首相は6月5日に訪米し、トランプ大統領との初会談に臨んだ。

 会談では、ウクライナ支援など、欧州の安全保障から距離を置き始める一方で、欧州連合(EU)との間でも、相互関税など高率関税発動で対立するトランプ大統領との間で安全保障や貿易問題などが、幅広く議論されたという。

「米国第一」を掲げるトランプ大統領は各国首脳との会談でも、通常は考えられない一方的な攻撃や批判をメディアの面前で展開することもしばしばだった。その意味では、メルツ首相は対米外交の第一歩は無難に終えたといっていいだろう。

 だが国内は、経済の立て直しなど問題が山積だ。ロシアのウクライナ侵攻前は、安いロシアからのエネルギーと、中国という輸出大市場の二つの成長エンジンのもとで活況だったドイツ経済だが、対ロ制裁などを機にしたエネルギー価格高騰や、中国経済の停滞、さらに製造業の競争力低下で、GDPは23年から2年連続でマイナス成長が続く。

 メルツ首相は、欧州の安全保障でのドイツの役割をより高めるとして国防費増強のほか、インフラ投資拡大など、ドイツの伝統の財政規律重視から財政拡張へと大きくかじを切った。

 だが、成長力減退の要因は構造的な環境変化によるものが大きく、成果を上げるには時間がかかりそうだ。

 ドイツ停滞の長期化は、欧州の外交や安全保障にも影を落とす懸念がある。