ケビン・ウォーシュ氏ケビン・ウォーシュ氏 Photo:Andrew Harnik /gettyimages

トランプ大統領が指名した新議長
高まるFRBの独立性への懸念

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、5月15日に任期満了となるパウエル議長に代わり、元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏が、上院の承認を経て新議長に就く見通しだ。

 ウォーシュ氏は、金融市場に資金を供給する量的緩和(QE)に批判的で、これまで、市場ではタカ派と目されてきたが、近年は、AI投資が生産性を高め、物価を押し上げにくくする可能性に言及し、利下げにも前向きな姿勢を示している。

 こうした姿勢の変化は、利下げを求めるトランプ大統領に忖度(そんたく)したと捉えられ、FRBの独立性が損なわれるのではないかとの懸念が浮上している。

 仮に独立性が失われることになれば、FRBは適切なタイミングで金融引き締めができず、インフレ率の大幅上昇と深刻な景気後退を招くおそれがある。

 8年前にパウエル議長を指名したのもトランプ大統領だったが、当時は、民主党系で金融緩和に慎重だったイエレン議長の後任として、党派色が比較的薄いということでパウエル氏が選ばれた。

 しかし、議長就任後もFRBは金融引き締めの姿勢を維持し、その結果、パウエル議長とトランプ大統領の対立が鮮明となった。見方を変えれば、この過程でFRBの独立性は守られたとも言える。

 ウォーシュ新議長の下で、FRBの政策運営は変わるのだろうか。

 米国、イスラエルのイラン軍事攻撃に端を発したイラン戦争の停戦・和平の行方は不透明で、ホルムズ海峡封鎖が続くことによる原油価格高止まりによって、米経済はインフレ再燃と景気減速が懸念される。

 こうした状況での難しいかじ取りに加え、AIの社会実装化が進み、生産性や物価への影響をどうとらえるかなどの新しい問題やウォーシュ氏が主張するフォワードガイダンスや量的緩和策などの従来の金融政策の枠組み見直しなど、待ったなしの課題が控えている。