
随意契約での備蓄米売り渡しスタート
早期に5キロ平均3000円台は実現するか
小泉進次郎農林水産相が主導し、5月26日から始まった随意契約による政府備蓄米の売り渡しには、事業者から多数の申請が集まった。対象となったコメは2021年産(古古古米)や22年産(古古米)で、6月になって追加が発表された分には20年産(古古古古米)も含まれる。粒の揃い方や味の感じ方はさまざまとみられるが、報道を見る限り、価格の低さもあって小売店での売れ行きは悪くないようだ。
農林水産省が調査会社のデータを基に算出した5月26日~6月1日に全国のスーパー約1000店で売られたコメ5キロの平均価格は4223円(税込み、随意契約による備蓄米の販売分は含まない)で、前の週(4260円)より37円下がった。昨年11月以来、約半年ぶりに2週連続で値下がりした。
3月から実施されてきた入札によって放出された備蓄米の多くは、銘柄米と混ぜたブレンド米として売られているが、安いブレンド米の割合が増えたことが平均価格を押し下げたようだ。
流通している大宗が24年産(主食米の生産量は679万トン)のなかで、入札で放出された31.2万トンによる小売価格への影響は限定的ともいえるが、入札による売り渡しが買い戻し条件付きだったのに対して、随意契約による売り渡しはそうではない。
今後、本稿執筆時点で25.7万トンの売り渡しが確定し、さらに20万トンの申請受付が始まった随意契約で売り渡されたコメの店頭販売が増えていけば、コメ全体の価格をある程度引き下げる効果があるかもしれない。
石破首相は5月21日の国会での党首討論で「(5キロ)3000円台でなければならない。4000円台などということはあってはならない」と発言し、6月初めの新聞社のインタビューでは、「6月半ばに平均3000円台。1年間で倍(の価格)になった状況は解消される」と強調している。
折しも24年のエンゲル係数が43年ぶりの高さになったこともあって、物価高への対応の議論が活発だ。
7月20日投開票と見込まれる参院選では、コメ問題や物価高問題への対応が投票先を判断する材料の一つになるだろう。石破首相の発言や各党が消費税減税やコメ生産支援などを掲げるのも票を意識したものであるはずだ。
だが、需要の長期的な低迷など、コメを巡る環境は大きく変化しており、物価高やエンゲル係数上昇の真の原因は別のところにある。