逆に言うと、2兆円を超える規模の公的資金の投入を期待していることを示唆する。政府が決めた2030年まで10兆円とする予算枠が2025年通常国会で予算関連法として成立すれば、そんなラピダスの期待に応えるための制度的枠組みになる。
ラピダスの運営方針を握る
自民党・甘利明の危うい思い込み
自民党で半導体強化策を主導してきた前衆議院議員の甘利明は2024年12月、江東区有明の展示会場ビッグサイトで開催された「SEMICON JAPAN 2024(セミコンジャパン2024)」で基調講演に立ち、「半導体の常識は変わった」との持論を展開した。
「半導体の世界で常識が覆されつつあります。1つは、開発や設計に専念するファブレス企業がこの世界を仕切るという常識です。ファブレスが半導体の世界を仕切っているのか。私はそうは思いません。いま半導体の世界で一番のリスクは、どんどん進化している設計を、高い歩留まりで正確に製品として量産できるファウンドリーが(TSMC以外に)ないということです。(微細度が)3ナノや2ナノになったらTSMC以外はついて来られなくなりました」
「先端品はTSMC1社に誰もが生産を委託しなければならない時代になる。これは世界の大きなリスクです。もし台湾海峡が(中国に)封鎖されるような事態になれば、先端半導体の供給が世界のほとんどで止まり、リーマン・ショックの何倍もの経済ショックが襲ってきます。TSMCと同等か近い技術を持つファウンドリーをどう作るか。それが世界のリスクを低減します。ラピダスの存在意義はそこにあるわけであります」
時価総額でマイクロソフトやアップルと肩を並べて世界トップ級となり、飛ぶ鳥を落とす勢いのエヌビディアでさえ、供給力はTSMCの生産能力の割当次第で決まる。
つまり、世界の半導体を仕切っているのはファウンドリーの方だという見立てだ。だから国を挙げたラピダス育成には、国家安全保障上の必然性と経済合理性があるというロジックになる。