特にメディアテックは、クアルコムの「スナップドラゴン」シリーズとライバル関係にある「ダイメンシティ」シリーズというスマホ用システム・オン・チップ(SoC)(注4)LSIを擁しており、途上国向け市場を含めた携帯端末向けSoCの世界シェアではクアルコムをしのぐ最大手である。

 TSMCの中核顧客はアップル、エヌビディア、クアルコムなどの米国のファブレス勢であり、海外需要への依存度が高いのは事実だ。しかし一方で、地元にも十分に厚い顧客基盤が存在するのだ。

台湾のような需要がない日本で
ラピダスは果たして成功するか?

 翻って日本のファブレス半導体産業はどんな状態か。

 もともとパナソニックと富士通の半導体設計部門を統合して発足したソシオネクストは、自社開発した半導体製品を広く外販するというよりも、家電や自動車メーカーなどの最終ユーザー企業の注文に応じて設計する「設計受託」とでも呼ぶべき事業が中心だ。

注文によっては2ナノを含む先端の微細化技術を使った設計も手掛けるが、看板となる自社ブランド製品はなく、ファウンドリーの顧客企業として世界的な存在感は薄い。

 地元に需要の大きな塊がなくて果たして何兆円もかけたファウンドリー工場がフル稼働できるのか。半導体業界内に悲観論が渦巻く中、ラピダスの工場整備はどんどん進んでいる。

注4 コンピューター機能の「頭脳」に当たるCPUやGPU、メインメモリー、無線通信制御チップなどで構成するシステムを1枚のチップに搭載した「システムLSI」の一種。現在スマホ用SoCの世界最大手はクアルコムで、その代表ブランドは「スナップドラゴン」。そのほか、アップルがiPhone用に自社設計する「A16」や「A17Pro」、メディアテックの「ダイメンシティ9400」などが代表例。いずれもCPU部分は英国のCPU設計会社であるアームの基本設計を採用している。これら最先端モデルの多くの製造をTSMCが担っている。