「お前みたいなが通用せんぞ」東海林(津田健次郎)の“偽悪的愛”が炸裂【あんぱん第81回】

9年越しの
赤いハンドバッグ大作戦

 長いといえば――

 赤いハンドバッグがここで再び登場。

 琴子と岩清水に背中を押された嵩はのぶの家に走って来る。

 玄関を開けたのは羽多子。嵩は風呂敷を広げ中から赤いハンドバッグを取り出し手渡す。

 羽多子「あてにくれたのかと思うて心臓ドキドキしたわ」

 蘭子「おかあちゃん、そんなわけないやろ」

 笑いどころをことさら強調しないのが『あんぱん』の奥ゆかしさである。さりげないながら江口のりこがバッグを嬉しそうに抱え、それを取り返されて拍子抜けしている表情がお見事。

 赤いハンドバッグの初登場は昭和12(1937)年。第31回、嵩が銀座のショーウィンドーで見つけた。それを購入し、第33回でのぶに贈る。でも受け取ってもらえなかった。

 千尋(中沢元紀)にあげたり、それをまた返されたり。最初はきれいに箱に入っていたのに、むきだしでやりとりされて、かわいそうだったつやつやの赤いきれいなバッグ。9年も放置された末、風呂敷に包まれて、今度は羽多子の手に。

 そのときのぶはすでに駅に向かっていた。いまから駅に行ってももう間に合わない。またしても渡しそびれたバッグ。もう9年たって流行も変わっているだろうに(たぶん、長い年月を経ても価値の変わらない良いバッグなのだろう)。

 余談だが、高知城が映ったのはじめてではないだろうか? 急に地方色が出た。三連休は最終日だが、これから夏休みシーズン。高知に行きたい、そんな旅情を刺激された。

「お前みたいなが通用せんぞ」東海林(津田健次郎)の“偽悪的愛”が炸裂【あんぱん第81回】