視聴者、思い出して!「夢は東京でパンを食べること」じゃなかった?記憶と現実のねじれの考察【あんぱん第78回レビュー】『あんぱん』第78回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第78回(2025年7月16日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

薪鉄子(戸田恵子)の
電話の用件は……?

『月刊くじら』8月号が出ると、薪鉄子(戸田恵子)から編集部に電話がかかってきた。

「ついに来たか」(津田)

「まさかこんな記事だとは驚きました」(薪)

 彼女にインタビューをしておきながら掲載していないことへのクレームだと覚悟した東海林(津田健次郎)は、のぶ(今田美桜)をかばって自分が矢面に立とうとする。

 いつもはいい加減に振る舞っているようで、いざとなれば頼りになる人なのだ。でも、先走り。勘違い。

 電話口で、東海林を見守るのぶや嵩(北村匠海)、岩清水(倉悠貴)。声が聞こえないので、胃を抑えている東海林を見て、さぞひどいことを言われているのかと想像するが、「おたく、おでんにあたった胃腸がたっすい編集長」と言われていただけだった。

 鳥居(古河耕史)も心配してやってきて、薪は高知の旧家の出で政界にも太いつながりがあるため、怒らせたら廃刊にされる危険性もあると脅かす。

 ところが、薪はのぶが八木(妻夫木聡)のことを書いた「ガード下の不思議なおじさん」「パンと読み聞かせ」という記事を褒めたくて電話をかけてきたのだった。しかも、のぶをヘッドハンティング。

「弱者の立場に立ち社会を変えていくのはこういう視点だと」、新聞社を辞めて自分の手伝いをしてほしいと言っていたと東海林はのぶに伝える。