SDVはとにかく競争が激しい分野だ。トヨタ自動車は子会社のウーブン・バイ・トヨタが開発した基盤ソフト「アリーン」を今年発売の新型RAV4に搭載することを発表している。一方で、マツダなどはそのトヨタと連携する形でSDV開発を行う方針など、中堅メーカーが単独で自主開発するのは容易ではない。ホンダと日産の連携もごく自然な流れといえる。
ホンダは、決算発表会見の後の5月20日に「ビジネスアップデート2025」を発表した。そこで注目されたのが、ホンダがクルマの知能化の目玉として27年ごろから搭載開始する次世代ADAS(先進運転支援システム)だ。これはカーナビで目的地を設定すると、一般道から高速道路まで車がアクセルやステアリングなどを操作してくれるシステムで、中国ではNOA(ナビゲート・オン・オートパイロット)と呼ばれ普及が進んでいる。
日産も「プロパイロット」でかねてこのシステムを進化させており、ホンダと日産による次世代SDVの基盤ソフト連合で世界への対抗を狙う。
少し余談になるが、先述したホンダの「ビジネスアップデート2025」では、ホンダは世界的なEV減速の現実対応として、30年度までのEV関連投資を従来の10兆円から7兆円に減らすと発表したことが大きく取り上げられた。10兆円投資の発表からわずか1年での大幅減額となり「ホンダEV戦略が後退」との認識が広がった。
確かに、三部社長は21年4月の就任直後に「ホンダは40年に新車を全てEV・FCVに切り替える」と宣言して、ガソリン車全廃へと大きくかじを切った。それだけに、EV戦略の後退と見られても仕方ない面がある。ただし、その分、米国で伸びているHVを強化するべく、次世代HVの投入を急ぐ現実路線に変更するとしており、短期的にはホンダの競争力強化につながりそうだ。また、40年のEV・FCV全面切り替え方針は変更なしという。
いずれにせよ、日産はエスピノーサ新体制で再建を待ったなしで進める必要があり、ホンダや三菱自動車工業、台湾・鴻海精密工業との協業も含め、生き残りに必死の状況にある。一方のホンダも三部社長が21年4月に就任してから、5年目を迎えており、ホンダのトップが6年で交代してきた慣例から見ても、この2年間でホンダの方針を定めなければならない。
日産もホンダも正念場であり、統合の有無はともかく「ホンダ・日産連合」を軸として生きる道を模索する可能性は高いと考えられる。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)