その意味では、4月からエスピノーサ新社長体制に移行した日産は、目下背水の陣で大リストラを実行できるかが最重要課題となっている。日産が自力で経営再建を成し遂げられるかは、ホンダとの連携においても極めて重要な要素となるためだ。日産は、15日に追浜工場の27年度末での生産終了と日産車体・湘南工場の26年度までの生産終了を発表した。国内工場の閉鎖については報道が先行し、地元経済では不安が募っていたが、経営再建のために苦渋の決断となった。

 日産のエスピノーサ社長は、6月の株主総会で、ホンダとの協業について前向きな姿勢を示していた。特に、日産の課題の一つが工場稼働率の低さだ。ホンダとは、北米市場での連携や生産効率化に向けた協議を進めていることを示唆していたが、その具体策が冒頭に挙げたホンダへの車両供給というわけだ。

 これに対して、ホンダも八郷隆弘前社長体制で英国・トルコの海外工場と国内の狭山工場などの閉鎖による再編を決断したが、依然として低収益の四輪事業を高収益の二輪事業で支えているという弱点を抱えている。稼ぎ頭だった中国事業が大きく後退する中で、もう一つの稼ぎ頭である米国もトランプ関税の影響から安泰とはいえない状況だ。

 また、三部敏宏社長体制下でも、三部社長自ら米ゼネラル・モーターズとの戦略提携を推進したのに、量販EVの共同開発や自動運転での取り組みも断念するなど成果が出ていない。その上、直近では三部社長の片腕だった青山真二前副社長がスキャンダルで失脚し、経営陣の立て直しも必要となっている。

 ホンダにとって米国は、かつて「アメホン(米国ホンダ)一本足打法」と言われたほどの最大収益市場なだけに、中国市場の急回復が難しい現状、ハイブリッド車(HV)拡販などをはじめとする米国での足場固めは必須だ。その中で、弱点となってきたピックアップトラックの供給は、米国市場強化につながることにもなる。

 さらに、知能化の“本命”とされるSDV(ソフトウエア定義車両)の開発でも両社にとって協業のメリットは大きい。