エヌビディアの時価総額は史上初4兆ドルを突破
対照的に、AI分野に集中したエヌビディア、SKハイニックス、半導体受託製造業のTSMCの業績は拡大傾向にある。7月9日、エヌビディアの株式時価総額は史上初めて4兆ドル(約588兆円)を突破した。AIが世界経済を牽引するとの見方から、ナスダック総合指数をはじめ米国の株価も史上最高値を更新した。
トランプ関税、AIなど先端分野での米中対立が先鋭化するリスクは高い。それでも、世界のIT先端企業のAI関連分野での投資意欲は減衰していない。市場予想の一つによれば、米マイクロソフトやメタ、グーグル、アマゾンなどによる設備投資額は25年に3100億ドル、26年は3500億ドル規模になる計画だ。
マイクロソフトは足元で人員の削減を進める一方で、データセンターの増設を重視している。設備投資の手綱を緩めれば、あっという間にライバルにシェアを奪われる危機感が一段と高まっているようだ。
主要企業に加え、欧州や中東の政府も、AIインフラの整備に乗り出している。欧州委員会は「AIギガファクトリー」と呼ばれる巨大なAIデータセンター構想を打ち出した。また、サウジアラビアはムハンマド皇太子自ら「HUMAIN」というAIインフラ運営企業を立ち上げている。AIの世紀が本格化する中、民間企業だけでなく政府も国家運営に必要なAIの運用体制を構築しなければならない。こうした動向もAIへの成長期待をいっそう高めている。
サムスン電子はAI事業の立て直しに向けて、グーグルと組んでAIデバイスの開発体制を拡充している。半導体分野でも構造改革を進める。4月、サムスン電子は半導体の受託製造を行うファウンドリー事業部にいた人員を、メモリー製造技術部門と半導体の研究所へ再配分した。
狙いは、次世代HBMの基礎技術と目される「IGZO」(透明酸化物)を素材にしたDRAM開発の加速だろう。IGZOトランジスタを使うと記憶素子を小型化でき、電力消費量も抑えられるという。それは、AI開発・利用の課題である電力消費量の低減につながると期待されている。