日本はすでに「AI後進国」なのか

 今後もAI関連分野が世界経済の成長を牽引していくだろう。サムスン電子のグーグルとの連携やIGZO半導体の実用化に向けた取り組みは、そうした潮流に対応する方策の一つだ。

 それでも、エヌビディアの成長速度に同社が対応しきれるか否か、不透明な点は残る。サムスン電子は半導体事業を分社化し、AI分野に特化した組織を独立させるべきとの見方すらある。有力企業であるサムスン電子ですら、対応が遅れると挽回は容易ではない。

 これは、わが国の企業にとって非常に重要な教訓だ。残念ながら日本には、サムスン電子と互角に競争できる半導体、デジタル家電企業は見当たらない。日本企業がAI関連分野の変革、成長に対応するには、事業運営の発想を根本から改めなければならない。

 一部では変わりつつあるものの、日本では依然として、新卒一括採用、年功序列、終身雇用の慣行を重視する企業は多い。職位が下の人から上位層へ順番にハンコを押して決裁する文化も残っている。電子印鑑を導入しデジタル化を推進した企業もあるものの、それはまだ一部で、事業運営の効率化に与える影響は小さい。

 その一方、人口減少の加速によって、雇用慣行の維持はますます困難になる。業務を効率化するためには、できるところからAIを導入し、省人化、自動化を実現すべきだ。最終的な意思決定は人間が下さなければならないが、前段階としての市場や経済分析、ルーティーン業の運営はAIで代替できる部分はある。

 マイクロソフトの調査(24年)によると、世界の職場での生成AI利用割合は75%だった。国別ではトップが中国で91%、米国は71%、日本は32%と最低レベルだった。

 日本も早期に先端のテクノロジーを導入しないと、民間企業のみならず国全体レベルで、「AI後進国」になってしまうだろう。発想の転換を急がなければ、日本はAI分野の成長についていけず、海外との格差が拡大する深刻な状況へ陥ってしまう。