なぜサムスン電子はAI関連事業で苦戦が続くのか

 4~6月期、サムスン電子の売上高は前年同期比0.1%減の74兆ウォン(1ウォン=0.1円換算で7.4兆円)と伸び悩んだ。本業のもうけを示す営業利益は前年同期比55.9%減の4兆6000億ウォン(約4600億円)で、市場予想を下回った。四半期の営業利益としては23年10~12月期の2兆8247億ウォン以来の低水準である。

 減収減益の主な要因は、AI事業が思うほど成果を上げられなかったことだ。特に、昨年末まで同社が世界トップの地位を維持したDRAM分野での凋落が著しい。

 1~3月期、サムスン電子のDRAM事業は、ライバルのSKハイニックスに世界トップの座を明け渡した。エヌビディアのGPUの演算処理能力に対応したHBMを供給できたか否かが、両社の明暗を分けた。

 24年7月、サムスン電子はHBM開発に特化した部署を立ち上げSKハイニックスを追い上げようとしたが、成果は出ていない。エヌビディアの「ブラックウェル」、「ホッパー」といったAIチップは、主にSKハイニックスのHBMと組み合わせて使われている。SKハイニックスは世界のHBM市場で70%程度のシェアを確保したようだ。一部、米マイクロンもエヌビディア向けのHBM供給を増やしている。

 サムスン電子にとって重要な顧客だった中国企業の変化も速い。中国ではディープシークのような新興勢から、アリババやファーウェイといった主力IT先端企業まで、各社が競って大規模言語モデル(LLM)を開発している。

 中国政府の産業補助金政策も追い風に、AIチップ需要は増加傾向だ。GPU分野ではファーウェイ、HBM分野ではCXMTが低価格でチップを供給し始めた。米国が輸出規制や制裁を科しても、中国のAI関連分野の成長スピードは加速し、汎用型の半導体市場では値崩れも起きている。

 サムスン電子はDRAMなどの価格競争に巻き込まれ、収益性を高めることが難しくなっている。1~3月期の売上高の43%を占めたスマホ事業は堅調さを保ったが、中華スマホに追い上げられるのは時間の問題との見方は多い。