トランプ米大統領がカナダとメキシコの輸入品に25%の関税を課すと表明した。関税政策が長期化すれば、米国に輸出する自動車をカナダやメキシコで製造している日系メーカーへの影響は避けられない。トヨタ自動車など大手3社の対象国における製造比率を明らかにするとともに、業績への影響に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
トランプ関税の影響は、自動車と金属に集中か
日本の実質GDPを1.4%押し下げる試算も
トランプ米大統領は2月1日、カナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を課す大統領令に署名した。税率のアップは4日からで、中国には10%の追加関税を課す。中国に対抗する形で実施した前回の関税政策と異なり、今回は不法移民や米国でまん延する薬物対策の一環という位置付けだが、日本を含む世界経済への影響は計り知れない。
大和総研はトランプ氏による関税政策が長期化した場合、日本の実質GDP(国内総生産)が、2年から3年以内に最大で1.4%程度押し下げられるという試算を出した。
製品別では、自動車や一次金属のセクターに影響が集中するとした。試算した同社の秋元虹輝エコノミストは「米国など関税処置を実施した国で、関税導入を背景とする輸入物価上昇で景気が悪化する『ブーメラン効果』が発生して、間接的に日本の景気後退を招く恐れがある」と語った。
動揺は株式市場にも及んでいる。3日の東京株式市場は、世界景気が後退するとの見方から幅広い銘柄に売り注文が出て、日経平均株価は一時前週末比1100円下落した。特に下げ幅が目立ったのは自動車株だ。
トヨタ自動車は前週末比5.0%減、日産自動車は同5.6%下げた。米国でハイブリッド車(HV)の人気が高いホンダや、米国市場でスポーツタイプ多目的車(SUV)の販売が好調だったマツダは上記の2社よりも下げ幅が大きく、それぞれ同7%超下落した。
東洋証券の大塚竜太ストラテジストは「関税の導入は、自国に有利な条件を引き出すためのディールとの見方が強かっただけにネガティブサプライズとなった。自動車株は関税の引き上げが業績悪化に直結すると連想しやすく、売り注文が広がったようだ」と分析した。
では、カナダ、メキシコへの関税で日系自動車メーカーはどれくらいの影響を受けるのか。次ページでは、カナダ、メキシコにおける主要3社の生産割合を明らかにするとともに、業績への影響に迫る。