良い市場とは一体なんだろう。
経済用語としての市場という言葉は、当然さまざまな意味を含んでいる。派生用語も多様であり、最近はうかつに市場原理(メカニズム)の効用などを説くと、小泉流自由主義改革に固執し、格差拡大の温床を認めるのか、などと批判されることがままある。
原点に戻って、単純に考えてみよう。質のよい商品が、適切な価格で、豊富に流通しているのがよい市場であろう。「適切な価格」という表現を使うのは、消費者にとって見れば低価格が、生産者にとって見れば逆に高価格が望ましいわけで、そのバランスが取れていることこそが重要だからである。適正価格の発見、形成は、市場の最も重要な機能の一つなのである。
だから、価格のバランスが崩れていたり、粗悪な商品が出回っているとしたら、それは悪い市場であり、原因となっている欠陥を直さなければならない。もっと言えば、欠陥を修正するだけでなく、絶えずメンテナンスをしていなければ、良い市場はできない。
では、誰がその努力をするのか。当然、市場参加者である。あるいは、担い手といってもいい。その努力を欠きながら、適切な利潤を得られないからといって、市場外の存在に助けを求めるのは筋違いである。ましてや、政府に直接的な所得補償、つまり補助金を求めるのであれば、それは言語道断である。
景気悪化が鮮明となり、総選挙が間近であることが加わって、政府与党が検討している緊急経済対策は、古色蒼然とした公共事業あるいは直接的所得補填の色が濃いバラマキ型の様相を呈し、規模も日々膨らみつつあるようだ。
そのバラマキ・直接補填型の先例が、745億円に上る漁業に対する緊急支援対策である。この5月、燃料の重油の価格高騰に我慢も限界とばかり、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は史上初めて全国20万隻の漁船が一斉休業することによって、窮状を訴えた。