預貯金は名目上の元本が減らなくても、インフレに負ければ実質的には目減りします(税引き後の預貯金の金利がインフレ率より高ければ目減りしませんが)。
もちろん、実質的な目減りを覚悟のうえで、「株価や為替の影響で大きく元本割れするリスクを背負うよりも、インフレに負け続けるほうがマシ」という考え方もあります。
ただ、私は「シニアだから」というだけの理由で投資を完全にやめる必要はないと考えています。
自分が生きているうちに使う予定のお金は株式などのリスクにさらさず、低リスク~中リスク程度の手堅い運用をするのが向いていますが、使うかどうかわからない(使わずに済みそうな)お金は、リスクを取って株式などで長期的に有利な運用を続けるのがいいと考えています。
ただし、ご自身で冷静に判断するのが難しくなってきたと感じたときは、思い切って投資から手を引くことも大事でしょう。投資詐欺に騙されたり、悪意ある人物に搾取されたりすることほど残念なことはありませんから。
日本の高齢者の多くが
「資産を使い切りたい」
Ans. ヨーロッパ貴族に学ぶ「自分のお金」から「家系のお金」「自分が生きた証としてのお金」への発想転換。
日本では「自分が生きているうちにお金を使い切りたい」と考える人が多いようです。経済財政白書(内閣府)によると、高齢者の遺産に関する考え方でもっとも多かったのは「使い切りたい」という回答で、全体の34%を占めました。
せっかく自分で築いた財産ですから、自分で楽しく有意義に使いたいと考えるのは当然でしょう。日本は相続税が高いことも影響していると思います。
しかし、自分が何歳まで生きるかなんて誰にもわかりませんし、貯蓄を取り崩すことに抵抗感もあるのでしょうか、日本人は「死亡時の財産額が諸外国と比べてもっとも多い」という調査結果もあります。
2022年の日本の相続財産は21.8兆円余りで、2013年の12.5兆円からほぼ倍増しました(国税庁調べ、相続税額が発生したケースのみ)。