内訳は多い順に現金・預貯金等7.6兆円(34.9%)、土地7.0兆円(32.3%)、有価証券3.5兆円(16.3%)で、これらだけで8割以上を占めています。しかも、これは相続税が発生したケースのみですから、実際の相続財産はもっと多いことになります。

 現金・預貯金がもっとも多いのは、現金を好む日本人の性格だけでなく、高齢者にはキャッシュレス決済が十分に浸透していないこと、さらにデフレ時代が長く続いた影響もあったのでしょう。

 いずれにしても「使い切る」ことなく後世に多額の現金・預貯金や有価証券を残したわけで、御本人は無念な部分もあったかもしれませんが、私はここに長期投資の真髄のようなものが隠されているように思います。

ヨーロッパ貴族の
考え方を参考にしよう

 実はこれ、ヨーロッパ貴族の考え方なのです。彼らは「自分のお金」というよりも「家のお金」「ファミリーの財産」という意識が強く、祖父母や親から受け継いだ財産を自分の代でも着実に増やし、それを後世に残すことを何代にもわたって繰り返しているのです。

 そのため株価や為替、地価の短期的な変動など気にせず(まったく気にしないわけでもないと思いますが)、超長期の観点で資産運用をしているのです。

 たとえば、タイミング悪く自分の代でリーマンショック級の経済危機が起きても、「すぐには回復しないかもしれないが、子や孫の代にはショック前よりも資産価格が高くなっているだろう」と考え、慌てて売ったりしないそうです。

「使い切りたい」という気持ちもわからなくはないですが、私は「財産」というかたちで「自分が生きた証を残す」考え方はカッコイイと思っています。お金や財産に関する自分の考え方、信念を次の世代に伝えることもできます。

 子や孫がいない場合でも、自分が応援したい団体や個人、お世話になった自治体などへの寄付というかたちで「自分が生きた証」を残すことができれば、それは素晴らしいことだと思います。