大麻由来の成分には「THC」(テトラヒドロカンナビノール)と「CBD」(カンナビジオール)の2種類が知られている。THCには幻覚作用があり、人体に有害だ。改正大麻取締法と改正麻薬取締法が一部施行されたことで、大麻は麻薬の一つとなった。ごく微量の残留限度値を超えるTHCを含む製品は、輸出入や所持に加え、使用も禁止されている。一方、CBDは国内で規制されておらず医療用としての用途が新たに認められた。
問題をややこしくしているのが、このCBD成分を含むオイルなどがネットなどで販売されており、そうした製品の一部にTHCを含むものがあるという点だ。海外では、大麻成分入りのキャンディやクッキー、チョコレートなどが販売されている。大麻成分入りの食品を密輸入して検挙される、大麻成分が入っていることを知らずに食べたことで緊急搬送される事例が増えている。
国内でも同様の事例がすでに起きている。記憶に新しいのが、大麻に類似した成分を混入させた「大麻グミ」を摂取した若者が緊急搬送されたケースだ。国は、「合法と紹介していても、安全であるとは限りません」と注意を呼び掛けている。
実際のところ、THCがはっきり表記されていないサプリも多く、THCに類似した新たな麻薬が次々と合成されているのが実態だ。消費者が成分表などから合法か違法かを判断することは難しく(というかほぼ不可能)、要は「海外のサプリにはリスクがあり、手を出さない」と考えるべきだ。
薬物依存リスクは企業リスクに直結
改めて当たり前のことを言うが、大麻は安全ではない。大麻を乱用すると、「記憶や学習能力、知覚を変化させる」「乱用を続けることにより、無動機症候群といって毎日ゴロゴロして何もやる気のない状態や、人格変容、大麻精神病等を引き起こし、社会生活に適応できなくなる」などと厚生労働省は注意喚起している。大麻は依存性が高い「ゲートウェイドラッグ」である。
そして「経営者と薬物使用」は、企業にとって重大な経営リスクになり得る。例えばオリンパスでは昨年10月、欧州出身のCEOが違法薬物を購入した疑いで書類送検、在宅起訴された。
また、15年4月にトヨタ自動車初の女性役員として着任した米国出身幹部が、麻薬成分を含む錠剤を密輸した疑いで同年6月に逮捕され、辞任した。この女性幹部は「膝の痛みを和らげるためだった」と容疑を否認、不起訴処分(起訴猶予)となり、22年に北米トヨタの「シニアメディアアドバイザー」の役職で復帰している。