その背景には、ホンダの四輪事業の収益性の低さがある。26年3月期第1四半期(25年4〜6月)の四輪事業の営業損益は296億円の赤字となった。当面、EV事業に偏るほど採算が悪化し、四輪事業の足を引っ張ることになるのだ。

 三部社長が就任してから、すでに5年目を迎えている。前社長の八郷隆弘氏は、その前の社長である伊東孝紳氏が推進した「世界6極体制による世界販売台数600万台」という拡大路線のツケを修正する立て直し(例えば、英国やトルコ工場、国内の狭山工場閉鎖など)に追われた。三部社長は、そうした縮小からの反転攻勢が期待され就任しており、本人も就任会見で「激動期に強いタイプ」と自らをアピールしてみせた。

 だが、その成果は芳しくない。「あらゆるアライアンスをいとわない」とホンダの“自前主義”からの転換を打ち出し、米ゼネラル・モーターズ(GM)とは、燃料電池などでの業務提携を発展させて、EV共同開発や自動運転のロボタクシー事業にも踏み込んだものの、EVや自動運転での提携はすでに解消している。GMは、ホンダとの連携から韓国・現代自動車グループとの連携に乗り換えてきている。

 また、昨年末の日産自動車との「経営統合への検討」発表は、三部ホンダの他社協業策の“究極形”として注目されたが、わずか2カ月で破談となった。ホンダの実質子会社化という提案を嫌った日産側だけの問題でなく、ホンダの手法も強引だったことで、提携ノウハウが蓄積されていないという問題点が指摘された。

 三部ホンダの連携実績としては、ソニーグループとのEV協業がある。ただし、合弁会社の「ソニー・ホンダモビリティ」が開発する次世代EV「アフィーラ」は、今年1月に北米での受注開始にこぎつけたものの、米カリフォルニア州新車ディーラー協会(CNCDA)からインターネット直販が違法だとして訴訟されるなど、冷や水を浴びせられた。また、ソニーとの連携は次世代実験車の意味合いが大きく、事業性の観点では大きな期待はできない。