電気料金は値上がりするのか…消費者も敏感に
今回の三菱商事の撤退に対して、政府の対応は遅れたようだ。8月22日、主要工事を担当する予定だった鹿島建設の離脱が報じられた。政府が発注した事業者と綿密にコミュニケーションを取っていれば、別の方策が取れた可能性もあっただろう。
政府は3海域で事業者を再公募する見通しだが、不確定な要素は多い。主なポイントは、価格(売電価格)を重視した公募形式をどう修正するか、政府の関与、事業者の見通しをどう評価するかなどの点だ。
政府が関与を強めれば、民間のリスク許容度は高まるだろう。一方、事業運営の効率性が毀損されるとの懸念もある。どのような方策が良いのか、政府の方針はまだ明確ではないようだ。
20年に政府が「カーボンニュートラル」を宣言した時、関係者の心中には洋上風力発電の伸びしろは大きいとのもくろみがあった。ところが、火力発電と二酸化炭素の回収・貯留(CCS)を組み合わせるなど、高効率発電システムの実用化はなかなか進まなかった。
対照的に米国では、小型モジュール炉(SMR)と呼ばれる従来よりも安全性が高いといわれる、次世代原子力発電や核融合発電スタートアップに出資するAI、IT関連企業が増えた。また、大手企業、例えばGoogleは米内外で再生可能エネルギー由来の電力購入を増やした。中国でも、再エネ、次世代発電技術の研究開発が加速している。
日本も、事業者不在になった3海域での公募を可及的速やかに進めることが必要だ。加えて、太陽光など他の再生可能エネルギー、CCSなどを組み合わせた環境負荷の低い火力発電、さらには安全性の高い原子力発電技術の実用化に向けた取り組みも待ったなしである。
今のところ、政府が取り組みをスピーディーに進める気配はあまり感じられない。AI関連分野での電力需要を満たせるのか、不安が募るばかりだ。電力料金の値上がりに対しては消費者も敏感になっている。一刻も早く政府にはエネルギー政策を練り直してもらいたい。