最低生活費とは、そもそも「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための費用でした。

 そうすると、ここには「健康……的な生活を営む」ための「最低生活費」と、「文化的な……生活を営む」ための「最低生活費」の2種類があることになります。ここでは、それぞれ「健康生活費」、「文化生活費」と名づけたいと思います。

「健康生活費」は、前提として、「基礎控除」とは別の「所得控除」である「医療費控除」があります。病院での診療や医薬品の購入については、原則として年間で10万円を超えた場合について還付を受けられる制度があります。

 ですが、コロナ禍で、毎日わたしたち国民がつけざるを得なくなった「マスク」の購入費用や、アルコール消毒などの感染対策のために個人が負担する費用については、医療費控除の対象ではありません。これまで想定されていなかった費用といえますが、これはまさに「健康生活費」だったと考えられます。

 それなのに、この点は無視され、2020年(令和2年)からも「課税所得」に含まれてきました。あのとき、わたしたち国民は、個人の嗜好でマスクをしていたのではないでしょう。「課税所得」から消費するものではなく、「課税所得」から除外されるべきものだったと思います。

 次に、「文化生活費」です。

 令和時代には、国からの情報を得たりさまざまな申請をしたり確定申告をする際にも、デジタル機器の使用が不可欠となりました。パソコン、タブレット、スマホなどですが、これらの諸費用は、まさに「文化生活費」といえるのではないでしょうか。

 このように令和時代に暮らすわたしたち国民には、30年前には負担が不要だった「最低生活費」の負担が、そもそも追加的に増えています。

消費税がこれだけ上がったのに
控除の据え置きは無理がある

 これに加えて、もう1つ議論されていない支出があります。それは、消費税です。

 消費税ができたのは、1988年(昭和63年)で、1989年(平成元年)4月1日からスタートしました。36年前のことです。物の購入やサービスの提供を受ける対価にかかる代金に、原則として上乗せされる税金です。