当時は3%だったものが、いまでは10%です。「生活必需品」には8%の軽減税率があります。この言葉からみても、「最低生活費」は、消費税によってもこの30年の間に大幅に負担が増えたことがわかります。

 ということは、「憲法」の要請である「生活費控除の原則」に応えるために、「税制改正」の議論として考えるべきことは、次の点でした。これらを踏まえた「基礎控除の標準額」が、30年前のまま(令和7年〔2025年〕改正前は48万円)でよいのか?ということです。

 それを、国民民主党は「123万円」(「給与所得控除額の最低保障額」55万円とあわせると、給与所得者の「課税最低限」は178万円)に引き上げるべきと主張したわけです。

 しかし、与党の税制調査会は、「48万円」を「58万円」に引き上げることしか提案しませんでした(令和7年度税制改正大綱)。国会に提出された修正案でも、所得や期間を区切った「上乗せ」があるだけで、国民全体の恒常的な「基礎控除の標準額」の引き上げは、あくまで10万円アップにとどめられました。

 30年前に比べて令和時代にあらたに増えた「最低生活費」だけをみましたが、「最低生活費」には、食費、住居費、水道・光熱費、被服費、教育費などがあります。これに加えて、文化的な生活なのですから、旅行や娯楽だって本当は含まれているでしょう。

 子どもを育てることになったとき、わたしたち国民はホテルにも東京ディズニーランドにも家族でレジャーに行くでしょう。「娯楽」は「消費」とされ、所得税法の世界では「課税所得」から、自分で処分するものと理解されています。

 ですが、この数年だけでみても、これらの費用の価格がどれだけ上がっているのか。こう考えれば、自ずと答えは導かれるはずです。

令和時代の「最低生活費」には
到底足りないという実情

 1年で「48万円」だった「基礎控除の標準額」を、「123万円」に引き上げる。それでは大幅減税になる。国が財源不足に陥る。こうして否定されたのが、国民民主党の主張です。