といっても、「123万円」の「基礎控除」は、月に換算すれば「10万2500円」でしかありません。
たとえば、東京の賃貸マンションに家族で暮らしている人は、月にいくら家賃で支払っているでしょうか。そう考えると、この国民民主党の額であっても、令和時代の「最低生活費」として十分といえるか疑問が残るでしょう。

政権与党の税制調査会が財源不足になると反対した、「基礎控除の標準額」を「123万円」(給与所得者の課税最低限を178万円)に引き上げる国民民主党の案でも、実際には、現実の「最低生活費」には、全然足りないのです。特に、人口が集中している東京都心での生活では到底足りない額といえるでしょう。
それでも、「立法府」である国会が決める「課税最低限」の額ということになります。「まあ、このあたりでしょうか」というラインを引くしかありません。地域で分けない全国統一額で「所得税法」は「基礎控除額」を定めているからです。
そうすると、あとはそのラインである「標準額」を超えた「最低生活費」については、「生活費控除の原則」の「例外」として扱われ、「課税所得」に含まれます。そして、「消費」として課税された所得のなかから支出することになります。
計算式を掲載すると、次のようになります。
理論所得-所得控除(最低生活費の控除)=課税所得=消費+貯蓄
それは、もともと「所得税法」が前提にしている考え(編集部注/たとえ生活費の範疇でも、基礎控除などの限度額を超えると課税対象とみなす所得税法の基本的な考え方)です。
しかし、「基礎控除の標準額」は「58万円でよい」という考え方には、令和時代の生活実態をどのようにとらえているのか、大いに疑問が残るでしょう。