日本チェーンドラッグストア協会によれば、2024年の国内ドラッグストアの総店舗数は2万3723店舗に達しました。これは、郵便局の数に匹敵します(2025年6月末時点で2万3460局)。

それはすなわち、新規出店による成長モデルが限界に達していることの証左ともいえます。
そんな状況下で業界トップ3に入る2社が統合するのですから、国内のシェア争いを勝ち抜くことが主目的ではないことは明白です。
統合の本当の狙いは、「手に入れた売り上げ2兆円超のグループを、何のために使うのか?」という“攻め”の戦略を考えることで見えてきそうです。
真の競合は国外に!
視線の先にある「海外の巨人」
今回のウエルシア・ツルハ統合を機に、国内の業界再編は一層進むことになるでしょう。
ただし、国内の競合――規模で次点にくるマツキヨココカラ&カンパニーはもとより、高回転率で注目されるサンドラッグや、調剤併設率が80%超で地域密着型のスギホールディングスなどは、もはやウエルシア・ツルハ連合が本当に見据えている競争相手ではありません。
統合発表の場で「アジアNo.1を目指す」との発言があったことからも明らかなように、彼らの視線は、海を越えた先にいる「巨人」たちに向けられています。
では、海外で想定される競合は、いったいどのようなものでしょうか。
● アジアの覇者、AS Watson Group(香港)
まず、アジアに目を向けると、世界最大のヘルス&ビューティ小売業、A.S. Watson Groupという巨大な壁が立ちはだかります。
同社はアジア・欧州を中心に28カ国に1万7000店以上を展開しています。特に中華圏では「Watsons(屈臣氏)」のプライベートブランド(PB)が絶大な人気を誇り、現地のニーズを的確に捉えた店舗フォーマットに特徴があります。
彼らの強みは、単に店舗数が多いことではありません。「O+O(Offline plus Online)」を戦略として掲げ、AIとビッグデータを駆使して1.7億人超の会員データを分析し、店舗とECを完全に融合させていることです。
これは、顧客一人一人に対し、いつでもどこでもパーソナライズされた購買体験を提供する先進的なモデルです。これからアジア展開を目指す日本企業にとって、避けては通れない強力なライバルといえます。