企業・ベンダー・コンサルが激変!DX2025 エージェントAIが来る#3Photo:MASTER/gettyimages

ドキュメントが残っていないブラックボックス化したITシステムを刷新する際に巻き起こる、さまざまなトラブル。日本のみならず世界で企業の経営問題を引き起こしているが、実はエージェントAIを活用するとこうした「地雷原」を安全に更新できる可能性があるという。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#3では、すでに世界で導入が始まった夢の技術の内側に迫る。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

失敗する可能性が極めて高いシステム刷新
AI活用でその泥沼から抜け出せるのか

 新たな機能や技術を企業の基幹システムに取り入れるために、老朽化したハードウエアや保守期限切れとなったソフトウエアを入れ替える「システム刷新」。それはいつも企業にとって一大プロジェクトであるとともに、場合によっては地雷原を探索するにも等しいリスクを孕む。

 数十年稼働し続けているが、設計書や仕様書などのドキュメントが残っておらず、中身がブラックボックスになっているシステム。問題なく動いていた旧システムの機能と仕様を全て新システムに移行したはずなのに、なぜか止まってしまう新システム――。ダイヤモンド編集部の過去特集でも何度か取り上げてきたが、大企業の基幹システムから、中小企業に至るまで、システム刷新が事故なく予定通り行える例は、実はいまだ少数派だという。

 日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査報告書2023」によると、500人月以上の大規模プロジェクトで「予定どおり完了」できた割合はわずか14.1%(2022年度)にとどまった。しかもこの割合は年々悪化しているというのだ。

 システム刷新トラブルはなぜ起こるのか。技術的な問題から政治的な問題までさまざまな理由があるが、「すでに複雑化しさらに内容が全て把握できているわけではない現状のシステムを、十分なテストをしないまま結果的に不完全な形で置き換えを行い稼働させた」という共通点が多かれ少なかれありそうだ。

 特集『DX180社図鑑』#1『プッチンプリン出荷停止のグリコだけじゃない!基幹システム問題を抱える企業リスト「SAPで大混乱」「7年遅れ」「コスト2.4倍」…』でも取り上げたが、基幹システム刷新の失敗は業績を直撃する。実は、この地雷原を安全に乗り越えるための新たな技術が、エージェントAIの活用で生まれつつあるという。

 どのような技術なのか、そして日本の大手企業でも適用は可能なのか。大規模なレガシーのシステムの刷新は何十年も日本企業の課題だった。まさしく夢のような技術だが、導入には経営陣とシステムの現場の意識改革も必要となりそうだ。どういうことか。早速次ページから見ていこう。