DX180社図鑑 株高&高給はどこ?#7Photo:PIXTA

DX導入や基幹システム更新で、慢性的な人手不足が叫ばれるIT業界。かつて外資系コンサルファームへの実質的な人材供給源と見なされていた大手ITベンダーが、社内のコンサル人材の拡充を打ち出し、人材獲得競争で反撃しつつある。また、基幹系システム更新など大型プロジェクトが増える中、50代以上で難しい案件をさばけるベテランの需要も急増。特集『DX180社図鑑』(全31回)の#7では、大手転職エージェント3社に人材市場の実情を聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

富士通1万人コンサル計画に暗雲
苛烈さを増すIT人材採用戦線

「人材獲得市場の厳しい状況が見えてきており、投資を使い切れないと考えるほど採用が難しい状況にある。計画の見直しも必要かと感じている」――。7月25日の決算説明会で、磯部武司・富士通副社長は話題を呼んだ「コンサル1万人計画」が難航していると明らかにした。

 富士通は200億円を投じ、コンサルティングスキルを有する人材を2025年度までに1万人に増やす、という計画を今年2月にぶち上げたばかりだった。アクセンチュアの日本法人の社員数の半数に相当する数のコンサルを採るという大胆な計画は、同業他社や人材エージェントの間でかなりの話題になった。

 新興DX(デジタルトランスフォーメーション)企業やコンサルファームが先行する中、富士通などのITベンダーは、DXブームに乗り遅れてきた。DX関連のシステム構築は、経営など上流から関与して顧客に提案していくコンサル的な手法が必要になる。ITベンダーが伝統的に手掛けてきたSI(システムインテグレーション)は、顧客からもらった仕様を基にシステムを構築するものでやり方が異なる。挽回にはコンサル人材など、DXプロジェクトを率いることができるIT人材の強化が必要だった。富士通を含む各社がこぞってコンサル増員を狙っていたのはこのためだ。

 しかし、人材獲得競争は年々厳しさを増している。というのも、人の取り合いはコンサルファームとITベンダー間のみならず、他の競争相手との間でも起こっているからだ。そして、これまで高給で絶対的に強いとみられてきたコンサルファームも、ある理由から人材獲得市場の中では必ずしも優位ではなくなりつつある。

 DXの要となる人材採用戦線で、次の勝ち筋はどこにあるのか。一方で、雇われる側にとって、コンサル、ITベンダー、事業会社のDX部門で求められる素質やスキルとは何か。そして各業界での給与水準は?次ページから見ていこう。