人口戦略会議や政府では、地域別TFRや東京ブラックホールという言葉を使い、TFRが低い東京の一極集中の是正を掲げるケースも多いが、平均出生率では都心3区は沖縄県の次に高い。
EBPM(エビデンスに基づく政策立案)が流行っているが、生産性を高めるため、人口減少下でも都市や地方の選択と集中を行い、人口密度を維持・向上させることは可能であり、データの取り扱いに留意しながら、適切な政策を打つ必要があろう。
かつて日本が覇権を取れたのは
とにかく長時間働いたから
成長を促進するため、労働力との関係で、最近の政策議論で抜け落ちている視点は何か。このヒントの1つを提示するため、興味深い試算を紹介しよう。
それは、「仮に日本における労働者1人あたりの平均労働時間が1990年と変わらない場合、2019年における日本・アメリカ・イギリス等の1人あたり実質GDPの順位はどうなっていたか」という簡易推計である。
先に推計の結論を述べると、これらの国々の中で日本は1位となる。以下、簡単にこの概要を説明しよう。
まず、この議論をするためには、約30年前(1990年)における労働者1人あたりの平均労働時間を知る必要がある。OECDデータによると、日本の1年間の平均労働時間は2031時間だった。アメリカは1764時間、イギリスは1618時間なので、日本はそれらの国々よりも250時間以上も多く働いていたことを意味する。
このとき、日本の1人あたり名目GDPは約25895ドルで、アメリカの23847ドルやイギリスの20854ドルを上回っていた。
しかし、2020年では、日本の1人あたり名目GDPは40088ドルであり、これはアメリカの63358ドルやイギリスの40394ドルを下回ってしまっている。
では、いま日本・アメリカ・イギリスにおける年間の平均労働時間(労働者1人あたり)はどうなっているか。実は、日本は1558時間、イギリスは1367時間だが、アメリカは1731時間であり、アメリカの平均労働時間は1990年頃とあまり変わっていない。日本の平均労働時間が1990年以降に急激に減少した
結果、現状ではアメリカの方が日本よりも170時間も多い状況になっている。