でもある日、その7人が同時にやめてしまってね。僕もやり過ぎましたが、昼夜なしの激務についてこられなかったんです。1人でどこまで描けるかなあと考えたこともあります。あのピンチをどうやって乗り切ったか、もう覚えていません。

――「おろち」では、少年誌とは思えないようなテーマも扱った。
第7話「戦闘」ですね。戦時中の激戦地ガダルカナル島を扱った作品です。
――中学生の正の父は教師で、思いやり深い人格者だった。見知らぬ傷痍軍人が正の前に現れ、父のガダルカナル島での恐ろしい「罪」を正に伝える。平和な時代に育った正には、とうてい受け入れ難い話だった。
「週刊少年マガジン」で、ニューギニアを舞台にした戦争マンガ「死者の行進」を描いきました。ちょっと不満の残る出来で、それが頭にあったわけではないんですが、戦争下の極限状況というテーマは共通していると思います。
――父の正体は人の姿をした鬼なのか。父の優しさは全てごまかしなのか。正の中で不信が膨らんでいく。父は正を2人きりの登山に誘う。父は、自分の秘密を知った僕を殺そうとしているのだろうか?
父子はわかり合えたのか。結末はあえてはっきり描いていません。少年誌でよくこれを描かせてもらったと思うし、それを受け入れてくれた読者のレベルも高かったと思います。
