赤毛にして「ブラボー!」を連発
そこにあった若手への思い

「みなさん、ポスト長友という言葉が好きですよね。ポスト長友、ポスト長友と何だかオッサンを外したいみたいなので、オッサンの意地や魂を、長友ここにあり、と思われるようなプレーを見せます。30歳を超えたらオッサンと呼ばれて、アスリートとしてコンディションが落ちるんじゃないかとおっしゃいますけど、35歳を超えてキャリアのピークを迎えた選手を、僕自身は間近で何人も見てきたので」

 年齢に対してこんな矜持を抱いてきた長友は、自身に向けられる批判をいつしか「仙豆(せんず)」と呼んできた。聞き慣れない「仙豆」とは、人気漫画『ドラゴンボール』に登場するアイテム。一粒でも口にすれば大けがが癒え、体力も回復する摩訶不思議な豆と自身に向けられる厳しい批判を同一視した。

「僕はそういった批判をプラスに変えて、すべてはプレーで見せつける、というマインドで成長してきました。僕にとって批判はまさに『仙豆』みたいなもので、もっとください、という感じでしたね」

 自らが率先してプレッシャーを背負い、逃げ道をふさぐ状況を生み出したのも一度や二度ではない。直近では前回のワールドカップ・カタール大会。日本を飛び立つ際に髪の毛を金色に染めた長友は、優勝経験のある強敵・ドイツ代表戦の前日には赤髪姿になった。その意図をこう明かしている。

「まずは日の丸の赤と、あとは僕の情熱とチームのみんなの情熱が燃え盛っている状態を表現しました。チームの何人かにどんな色がいいかと聞いたら、赤という意見がけっこう出たし、僕自身も赤しかないと。僕だけでなく、チームのみんなもワールドカップへ思いを燃えたぎらせているんだと感じたので」

 金髪以上に赤色の髪は目立つ。世間の耳目を意図的に自分自身に向けさせた長友は、さらに機会があるたびに「ブラボー!」も連発してチームを鼓舞。ドイツに続いて強敵スペイン代表も逆転で撃破し、前評判を覆す快進撃で世界を驚かせたカタールの地で、こう語りながら笑い飛ばしている。

「これで負けていたら『長友、調子に乗っているよ』と相当な批判を食らっていましたよね。ここまで派手なことをやってダメだったら、すべての批判を自分が受けるぐらいの覚悟でやっていました。その意味でも若手には本当に伸び伸びと、何も考えずにプレーしてほしい、という思いも込めていました。大きなリスクがある賭けでしたけど、間違っていなかったですね。自分を褒めたいと思っています」