ところが入院中、医師に「もう一人暮らしは難しい」と言われた義母のため、夫は「グループホーム」と「特別養護老人ホーム(特養)」を検討。その間、「介護老人保健施設(老健)」に移ることになったが、入所費用を自動引き落としにする銀行口座を登録する必要があり、登録のための書類には、口座情報欄とともに登録印を押す欄があった。

 夫は義母を呼び寄せて以来、義姉と話し合い、義母の介護に関わるものは全て義母のお金で賄おうと決めていた。だから老健の費用も当然、指定するのは義母の口座だ。

 夫は義母の了承のもと、義母の部屋で預金通帳などを探すと、本人名義の通帳4つと、夫と義姉名義の通帳1つずつ、そして印鑑8本が見つかった。

 腰が悪い義母は年々出不精になっていったが、記帳はしていたようで、どの口座がどんな役割で使われているのかを把握するのは簡単だった。だから夫は、老健の費用は年金が振り込まれているメインバンクのものを使えばいいとすぐに判断した。

 だが、登録した印鑑が8本のうちどれなのかはさっぱりわからない。本人に印鑑8本を見せながら尋ねても「覚えていない」という。

 仕方がないので夫は、義母宅にあった印鑑で一番使っていそうな印鑑を押して提出。しかし、老健に入所してしばらく経った頃に銀行から「書類不備」という報せが入り、出し直す必要に迫られた。

 あと7本のうちのどれかが正解なのだろうが、失敗を繰り返したら銀行側が不審に思っても不思議ではない。老健からの自動引き落としに関する書類の不備なら、親族の誰かが本人に無断で手続きを進めているか、あるいは、本人が認知症を患うなどして判断能力が低下しているのではないかと思われるかもしれない。

 すると最悪の場合、本人の財産を守るために口座が凍結される可能性がある。

銀行が教えてくれた
まさかの登録印確認方法

 この口座は義母宅の家賃や電気ガス水道代の引き落とし先であり、年金の入金先でもある。凍結されたら年金も使えなくなるし、ライフラインの支払いも滞る。そうなれば、夫は自分の財布を開かないといけなくなるかもしれない。