
愛知県立中高一貫校4校が開校したことで過去最高の受験者数を更新した東海3県の2025年の中学受験。特集『わが子が伸びる中高一貫校&塾 2026年入試直前版』の#3では、日能研東海、浜学園、マイシフトの3塾、そして海陽学園の4者が座談し、東海エリアの25年入試を分析するとともに、さらなる県立校5校の開校が控える26年入試の行方を占う。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
関西の入試統一日と重なったことで
越境受験組は「荒れ模様」の入試に
――愛知県をはじめとする東海地区の2025年入試の振り返りからお願いします。
藤原康弘・日能研東海企画情報部部長 まず全体の状況から言うと、2025年中学入試における東海地区3県の受験者数は、愛知県がけん引して計1万4223人と過去最高を更新しました。全国的な傾向だと思いますが、東海地区でも男女別学において男子校の価値が徐々に上がっていると感じています。25年入試でも男子校、男子受験生が元気で、男子の志願者数が増加し、男子校に入りたいけれど入れないという状況でした。
具体的な学校名を挙げれば、同席されている海陽学園さんもそうですし、東海、名古屋中学、そして南山男子部と軒並み志願者数が24年入試と比べて増加しました。特に南山男子部では志願者数が24年入試よりも100人以上増え、非常に厳しい入試になりました。

岩佐博紀・浜学園講師 浜学園の場合、東海地区だけでなく関西の学校も越境受験する生徒がかなりいるので、両地区の状況を併せてお話しします。私は浜学園に入って15年目ですが、25年入試は関西の統一入試日(25年1月18日)と、(愛知県の)金城学院や愛知中学などの入試日が重なった初めての入試になりました。そのため、東海地区と関西双方の学校を受験する家庭の場合、志望校選びに混乱するケースが相当数おられましたね。
実際、愛知中の受験結果を例に取ると、模試でA判定だった生徒はもちろん、B~C判定だった生徒も軒並み100%合格で、D判定でもほぼ不合格がいない状況でしたが、そういう意味では少し荒れ模様の入試だったかなと思います。

――先ほど海陽の校名が挙がりましたが、実際に25年入試では全ての日程で志願者数が増えました。この結果をどのように分析していますか?
西村英明・海陽中等教育学校校長 本校は全国から生徒募集をしていますので、一概に東海地区の学校として位置付けられないのですが、全ての入試方式だけでなく、地元の東海地区を含めた全ての入試地区で志願者が増えました。その理由は、他地区よりも早い入試日程にあると考えています。いわゆる年内入試を実施していまして、それが全国的に認知され始めてきたのでしょう。

――海陽の受験者の地区別の特徴はありますか?
西村・海陽中等教育学校校長 あくまで肌感覚ですが、東に行けば行くほど、各学校の教育方針を重視する家庭が多い印象です。わが子にどのような教育を受けさせたいのか、という考え方です。一方、関西の方は大学進学実績を重視する傾向が強いと感じますね。
――近年、首都圏では男女別学志向が強まり、片や関西では共学化の流れが強まっていますが、東海地区では男子校人気が高まる半面、女子校の方は苦戦を強いられています。その理由をどうみていますか?
西村・海陽中等教育学校校長 まず、先ほどのお話にも出た男子校人気から言うと、東海という医学部への進学実績に強い男子校の存在に引っ張られている側面があるのではないかと。同時に女子の受験生も進学実績を軸に受験校を選ぶ傾向が強まっており、女子校ではなく例えば共学の上位校である滝を選択する、といった動きが強まっていると思います。
杉原成彦・マイシフト常務執行役員 進学実績に加えて、人気が高まっている名古屋中をはじめ、部活や教育方針に特色がある男子校が、特に選ばれている印象が強いですね。

岩佐・浜学園講師 女子校の不人気というよりも、かつては存在感が薄かった共学が、男子校や女子校に並ぶ新たな選択肢として加わってきた、というイメージです。金城学院はいまだ「純金」と呼ばれるほどのブランド力がありますし、愛知淑徳も制服のかわいさなどから「絶対に行きたい」という女子が多くいます。
――東海エリアの25年入試のもう一つのトピックとして、愛知県立中高一貫校4校が一挙に開校したことが挙げられます。倍率が17倍を超えた明和高校附属中をはじめ、非常に人気が高まりました。その影響をどうみていますか?