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第3次“中受”ブームに突入した関西。1カ月後に迫った2026年入試では、過去最高の受験率となった25年入試を超える過熱が確実視されるだけでなく、受験動向の激変も指摘される。特集『わが子が伸びる中高一貫校&塾 2026年入試直前版』の#22では、混迷の26年入試の行方について、関西の中学受験を知り尽くす中学受験塾幹部たちに聞いた。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
大教大池田の入試日変更で
関西の中学受験は「短期決戦」化へ
関西(2府4県)の直近2025年入試の受験者数は、日能研関西の推計で1万7583人と前回24年入試から271人増え、受験率も過去最高の10.52%(同0.35ポイント増)へと跳ね上がった。
日能研関西の森永直樹取締役は「受験者数の3年連続の増加は2000年以降で初。京都府や兵庫県の受験者数は減ったが、大阪府の高校授業料無償化の影響で、それを超える爆増が大阪府で起き、全体の数字を引き上げた」と分析する。
では、来年1月17日に統一入試日を迎える関西の26年中学入試はどうなるのか?
「高校授業料無償化によって、急きょ中学受験に参加してきた『ライト受験層』の動向は読みづらいものの、全体の受験者数は25年入試よりさらに300人ほど増える可能性がある。また受験率の上昇もほぼ確実視されており、11%に近い水準まで上がるのではないか」と、森永氏。
どうやら関西の26年入試は、過去最高の激戦になりそうだが、さらに26年入試では多くの中高一貫校が“勝負”に出ることで、受験動向の激変も予想されている。
浜学園の松本茂学園長は「最大の変化は、大阪教育大学附属池田が、これまでは関西の中学受験のトリを務めるような『(統一入試日から数えて)8日目午前』だった入試日程を前倒しして、『1日目午前』に変更したこと。その結果、関西の中学受験は従来、統一入試日からおよそ1週間の戦いだったものが、3~4日であらかたの勝負がついてしまうという意味で、これまで以上に短期決戦になっていくだろう」と話す。なお、統一入試日とは、多くの私立中高一貫校がこの日に一斉に入試を行う「入試解禁日」のことだ。
大教大池田が変更したのは入試日だけではない。入試科目から理科と社会、実技を廃止し、国語と算数、作文のみへと“軽量化”しただけでなく、募集定員も144人から108人へと大幅に減らす一方で附属高校から原則として全員が内部進学(連絡進学枠)できるように変え、さらには受験可能な通学区域も拡大した。
また同じく国立の神戸大学附属も募集定員をこれまでの120人から105人に減らし、逆に京都市立西京高校附属、京都府立洛北高校附属、同南陽高校附属という京都の公立中高一貫校は募集定員を20~30人増やすことを決めた。「いずれも高校授業料無償化による私学志向の高まりへの国公立校の危機感の表れで、一部私学も引っ張られる形で入試日程や定員、入試科目を変えてきた」と松本氏。
一方、高校授業料無償化の影響がほとんどないと目されているのが、灘を筆頭とする最難関9校だ。「この学力層になると、高校授業料無償化とほぼ無関係に受験校選びが行われる」(希学園の黒田耕平理事長兼学園長)からだ。
黒田氏は「最難関校の中でも別格の灘の受験者数は26年入試も高止まりが続くとみられるが、25年入試で受験者数を大きく減らした東大寺学園と甲陽学院が、どこまで受験者数を戻せるかが注目ポイント。同じく受験者数を減らした西大和学園は男女とも難易度が高まっており、26年入試でもチャレンジ受験が減る可能性がある。片や、(大阪府の)高校授業料無償化を追い風に受験者数を増やした大阪星光学院は26年入試でも人気が続くだろう」と読む。
一方、最難関校に次ぐ学力層の難関校では、受験動向が一変しそうだ。台風の目は、やはり最難関校への仲間入りが目前とされる人気校、高槻である。同校は「B日程」の男子の募集定員をこれまでの60人から40人へと3分の1も減らす代わりに、「A日程」で男子の募集定員を100人から110人へ、女子を80人から90人へとそれぞれ増やす。
アップ執行役員で進学館ルータス統括の吉田努氏は「高槻の目的は、女子の強化に加え、男子は第1志望者をできるだけ集めたいということ。26年入試のB日程男子の難化は避けられない」と指摘する。
次ページでは、高槻と共に人気上昇中の雲雀丘学園や関関同立付属校、人気中堅校などの受験動向を一挙に分析。特定のライバル校を狙い撃ちにするかのような入試変更など、「仁義なき戦い」の行方にも注目だ。







