言葉の面から言いますと、生まれたときの「おぎゃー」から始まる言葉以前の発話の時期、絶対的な関係にある母親との対話の時期、それよりも大きな世界を相手に言葉を使う時期、というふうに言葉がもたらす世界は年とともに広がっていきます。

 母親との絶対的な関係の中で、母語の基礎が出来上がるのが、だいたい4歳くらい。

 そして、母親を超えた世界との交感を経て、母語が一応の完成に至るのが、10歳ころ、ということになります。

 ピアスは、母親の保護の手を超え出て、自分自身の力で世界を相手にしていく力のことを、「パーソナル・パワー」と呼び、パーソナル・パワーの発達を、7~11歳の間と位置づけています。これは、母語の完成の時期とほぼ一致しています。言い方を変えると、人は、「自己」と「言葉」を同時に(並行して)獲得する、と言ってもいいかと思います。

言葉の3大機能

 まずは、「言葉の3大機能」という話から始めます。

 私は、言葉というものが持つ最も基本的な役目は、次の3つだと考えています。

 まず、自分の気持ちや考えを相手に「伝える」こと。

 2番目に、相手に何かを「尋ねる」こと。

 3番目に、相手の質問に「答える」こと。

 この3つです。

 この点に異論のある方は少ないと思います。人間の会話は、基本的には、「伝える、尋ねる、答える」という言葉の3大機能によって成り立っているのです。

 ですから、子どもが言葉を獲得するというのは、まずこの「3大機能」を身に付け、それを次第に深化・応用していく過程と見ることができます。

 では、そのプロセスを、子どもの発達という時系列の中で位置づけると、どのようになるでしょう。

〈ネイティブの子どもが英語を獲得する10のステップ〉
1.言葉を発する(赤ちゃん期)
2.自分の意思・欲求を相手に伝える
3.相手に尋ねる(幼児期)
4.相手に答える
5.相手に働きかける 
6.自分の気持ちを表す
7.自分について述べる(子ども期)
8.第三者について語る
9.思う・考える
10.分析する・判断する

 順に説明していきましょう。