ほめ合う文化で人が辞めない組織は作れる

 ここで言う「ほめる」は、「おだてる」とは全く違います。単に相手の機嫌をとるだけでは、その場の雰囲気は和らいでも、相手にとって「ちゃんと見てもらえている」という実感にはつながりません。

 大切なのは、結果につながった具体的な行動をほめることです。「資料の準備が丁寧だったおかげで、クライアントとスムーズに打ち合わせできた」「トラブルが起きたとき、すぐ対応してくれたので大きな問題にならずに済んだ」といった言葉は、本人の努力や貢献をしっかり見ている証になります。こうしたフィードバックが積み重なることで、「自分はこの職場に必要とされている」という感覚が強くなるのです。

 人が辞めない職場づくりでは、もちろん「給与を上げる」「福利厚生を充実させる」といった取り組みも大切でしょう。ですが、それ以上に若手が強く求めているのは、「努力をきちんと認めてもらい、長期的に育ててもらえる安心感」です。心理的な安全性や自己肯定感を育める文化こそが、定着のカギを握っています。

 人材不足を嘆く前に、まずは社内で「ほめ合う文化」を築きましょう。上司から部下へ、そして同僚同士で。互いに存在を認め合い、小さな努力や成長を見逃さずに伝えること。これこそが退職を防ぎ、採用力を高め、最終的には企業の競争力を押し上げる、最もシンプルで効果的な戦略です。

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