世界の外貨準備に占めるドル比率56%と過去最低に、「ドル離れ」はどこまで進むか徹底検証Photo:PIXTA

IMF(国際通貨基金)が発表した2025年6月末の外貨準備に占めるドル比率は56.32%と過去最低を更新した。だが為替調整後は57.67%でおおむね横ばい。上半期のドル安が見かけの比率低下を拡大させた。短期の評価替えと、長期の「脱ドル」トレンドの交錯をデータで分析するとともに、今後のドル離れの行く先を検証する。(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

外貨準備に占めるドル比率が低下した
2025年上半期にドル安も進行

 10月1日、IMF(国際通貨基金)からCOFER(外貨準備の構成通貨データ)が公表されている。為替市場を中長期的に展望するに当たって重要なデータであるため、筆者は定期的に観測している。

 世界の外貨準備は2025年6月末で前期比4048億ドル増の12兆9448億ドルとなった。後述するように、25年3月末から6月末はトランプ米大統領の言う「解放の日(4月2日)」を挟んで極端なドル安相場が発生した期間である。

 ICE(インターコンチネンタル取引所)のドルインデックスで10%以上下落し、BIS(国際決済銀行)公表のNEER(名目実効為替相場)でもドルは5.0%の下落に直面している。

 今回、IMFは発表に合わせて「為替調整後のドル比率は安定(Dollar’s Share of Reserves Held Steady in Second Quarter When Adjusted for FX Moves)」と題したIMF Blogを公表している。後述するように、今期のドル比率は56.32%と過去最低を更新しているため、「ドル離れ」というテーマが市場の思惑によって暴走しないように配慮したのかもしれない。

 ブログでは「決定的な点(a crucial detail)がしばしば見落とされがちである。それはドル建てで報告されているということだ」と冒頭で指摘し、「為替変動が起きれば中央銀行が何もしなくても比率は動く」と周知の事実を改めて確認している。

 具体的にブログでは「ドルインデックスは上半期に10%以上下落し、これは1973年以来で最大の下落だった」との事実が指摘され、4~6月期の3カ月間だけでドルは対ユーロで7.9%、対スイスフランで9.6%も下落したという事実が確認されている(ちなみに上半期まで範囲を広げればそれぞれ10%以上、11%以上の下落である)。

 なお、ドルの対スイスフランでの上半期の下落率は過去10年以上で最大だったという。

 次ページでは、ドル以外の通貨の外貨準備に占める比率にも触れながら、「ドル離れ」の現状を分析する。