ドル安は9月中旬に反転でも“下がらない”米金利、データが明かす「ドル離れ」の真相と危うさPhoto:PIXTA

2025年4月の「解放の日」以降、金融市場ではドル安を背景に「ドル離れ」が新常態のように語られてきた。しかし名目実効為替相場や対米証券投資統計を検証すると、その実態は必ずしも単純ではない。ドル安局面はいったん収束しつつある一方、米長期金利の「下がりにくさ」は新たなリスク要因として浮かんでくる。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

名目実効為替相場で見ると
ドル安は9月中旬には反転

 相互関税が発表された2025年4月2日(解放の日)以降、金融市場では「ドルの基軸通貨性」に疑義が生じ、ドル全面安が発生した。

 いわゆる「ドル離れ」がテーマ化され始めたわけだが、筆者は米財務省の発表する対米証券投資統計(TICデータ)を基にその真偽を注視し、客観的な議論の必要性を呼び掛けた。

 4~5月の金融市場は第2次トランプ政権の一挙手一投足に翻弄される中、「ドル離れ」が新常態のように語られ、ドル円相場に対しても円高反転を期待する機運が盛り上がった。

 しかし、ハードデータの裏付けがない動きに持続性はない。為替市場は自己実現的な取引が盛り上がりやすい性質があり、オーバーシュートが常だ。「ドル離れ」の永続性にベットするようにドル安・円高シナリオを想定することに筆者は抵抗があった。

 結局、名目実効為替相場(NEER)で見るとドル安は9月中旬には反転しているのだが、果たして「ドル離れ」は事実だったのか。あれほど騒いだ以上、検証と今後への展望は必要だろう。

 次ページでは、TICデータに基づき「ドル離れ」の真相を検証する。