南アフリカランドPhoto:123RF

対ドルで史上最安値を記録したランド
対米関係の悪化が下押し材料

 南アフリカランド(以下、ランド)は、今年4月に1ドル=19.933ランドと、対ドルで史上最安値を更新した。その背景には、米トランプ政権発足後の米国と南アフリカとの間の関係悪化があった。

 トランプ大統領は2月、南アフリカの人種間の土地所有格差の改善を目指した土地改革政策への批判と、ガザ問題をめぐる対立を理由に、南アフリカに対する資金援助を凍結した。

 3月には、南アフリカのラスール駐米大使がトランプ氏を「白人至上主義を主導している」と批判したから、米国は同氏を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人)と認定し国外退去処分とした。

 そして4月はトランプ政権が世界各国に対して相互関税を発表する中、南アフリカに対しては日本や欧州などよりも高い30%の関税率を示した。

相互関税導入延期と資源高が
ランドを押し上げる

 しかし4月9日に、米国が相互関税導入の90日間延期を発表しことをきっかっけに、ランドは反転し、9月まで上昇基調で推移している。9月のランドは、対ドルで一時17.211ランドと年初来高値を更新。ランド円も4月に付けた安値(7.26円)から大きく反発し、9月には昨年12月以来となる8.60円と対ドルと同様に年初来高値を付けている。

 ランドが大幅安から一転して上昇した材料として、米国との多角的交渉による関係改善への期待に加え、世界的な資源高がある。南アフリカは白金族の供給で世界全体の55.3%を占めている。白金族の一つであるプラチナは、4月から7月にかけて最大69.7%の上昇をみせ、同じく白金族のパラジウムも47%の上昇となった。

 金も白金族と並んで南アフリカの主要産品である。金価格はNY金先物が史上最高値を更新するなど上昇が目立っており、ランドを押し上げる一因となった。