
S&P500はピーク近くまで回復したが、
米国債、ドルへの不信感は依然残る
米国金融市場は、4月2日の相互関税の発表以来、株安、債券安、ドル安の「トリプル安」に見舞われた。これを受けたトランプ大統領は、各国共通の相互関税10%だけを残して国別の上乗せ幅賦課を90日間先送りし、異常な高率関税をかけあっていた中国に対しても、双方が115%関税を引き下げることで合意、145%に達していた対中関税を30%としたうえで貿易交渉に入るなどの調整を施した。
その後、株価は、S&P500で見ると、一時ピークから2割以上下げていたが、直近ではピークまで2%余りというところまで戻した。一応、トリプル安状況は止まったように見える。だが、為替ドルと米国債の動向は変調から脱したとは言えない。
米国債10年物利回りとドル実効レートの動き(図表1)や、米国10年債利回りの上昇の状況を予想短期金利とタームプレミアムに分解した動き(図表2)でみると、相互関税導入以来、米国金利と為替の順相関が崩れたままであることがわかる。
また、後者からは、昨今の米国長期金利の高止まりが予想短期金利の要因ではなく、長期の保有による価格変動などのタームプレミアムの上昇によって起きている流れが継続していることがわかる。
両者が示すのは、「タームプレミアムによる長期金利上昇はドル買い要因ではない」ということだ。
つまり、このタームプレミアムの上昇とドル安の組み合わせにトランプ政権の経済政策の危うさがあることを示している。
トランプ減税恒久化などでの財政赤字拡大による米国財政の持続性への不安感、そして今後、トランプ政権が米国にとって不公正とみなす税制を課している国の企業の対米投資に報復課税を課す懸念があるなど、ドルへの投資を持続するリスクが払拭されないからだ。
米国債とドルに対する市場の不安感や不透明感は依然、なお強いといえる。