なぜバイデン前政権はTikTokを問題視?
米国事業売却の経緯

 振り返ること2024年4月、バイデン前政権はTikTokの利用を禁止する法律を成立させた。この法律は、「外国敵対勢力が管理するアプリから米国人を保護する法」、あるいは「TikTok規制法」と呼ばれている。

 当時、米国政府はTikTokや親会社のバイトダンスを名指しで非難した。中国がSNSを使って、スパイ活動や米国世論への影響力拡大を狙う恐れがあったからだ。バイデン政権は、バイトダンスがTikTokの米国事業を売却すれば、法律適用を免除する条項を付けた。

 同年5月、TikTokはバイデン政権の新法に反発し、米国政府を提訴した。訴訟は最高裁までもつれ込んだ。25年1月米最高裁で敗訴が確定し、バイデン政権のTikTok規制法の有効性は認められた。1月19日に米国はTikTok規制法を施行した。

 ところが1月20日、第2期トランプ政権が発足すると状況は一変した。同日、トランプ氏は、TikTok規制法を停止する大統領令を発表した。TikTok禁止令の発動も75日間延期し、米国事業の買収を狙うことになった。

 当初、中国はTikTokの米国事業売却に反対し、禁止を受け入れる方針だった。中国政府は、トランプ関税や半導体規制を受ける中で、TikTokに関する要求に譲歩したとみられることを嫌ったのだろう。

 一方、トランプ氏はTikTokの米国事業売却とサービス継続にこだわり、今年4月、6月、9月と3度にわたって利用禁止期限を延期してきた。その間、トランプ政権は対中関税の引き下げや、AI(人工知能)チップの輸出再開などで中国との取引を模索し、今回ようやく米国事業売却の大枠合意を取り付けた。

 現時点で判明した内容として、米オラクル、投資ファンドのシルバーレイクなどの企業連合がTikTokの米国事業を取得する。事業価値は140億ドル(約2兆円)規模とみられる。取締役7人のうち6人は米国人が就任。米国政府は重要な事項に拒否権を持つ「黄金株」は取得しない。

 9月27日の時点で、バイトダンスは「合弁会社の株式を20%未満の水準で保有する方針」と報じられている。バイトダンスは、TikTokのアルゴリズムの利用権を米国企業連合に提供する見込みだ(ライセンス供与)。