トランプ氏TikTokフォロワーは300万人超
経済への影響、米国の実質GDP約1%も!

 トランプ氏は、最高裁が認めた前政権の禁止令を覆した。そこまでTikTokの米国事業継続にこだわるのは、政治・経済の両面で大きな影響があるからだろう。

 特に、TikTokがトランプ氏の大統領再選に果たした役割は大きい。24年6月にトランプ氏はTikTokのアカウントを開設した。数日間でフォロワー数は300万人を超え、ライバル候補を大きく上回った。

 大統領選挙戦中も、トランプ氏はTikTokを活用して自らの主張への支持を取り付けた。代表的な調査に、南カリフォルニア大学の研究者らの論文がある。23年11月1日~24年10月16日、政治関連ハッシュタグ数のランキングで、「trump」は77万4506件あった。「trump2024」は46万5388件、「maga」は34万9150件。いずれも「biden」の33万8506件を上回った。

 ピュー・リサーチ・センターの調査によると、TikTokユーザーの86%が「比較的自由に政治的な見解を発信できる」と考えている。これは、TikTokの検閲が相対的に自由なことが影響しているとの指摘もある。

 しかも、TikTokは、AIがユーザーの好みや関心に合ったコンテンツを自動的に表示する。ユーザー自身が探す手間なく、好みに合った動画を半永久的に流してくれる。

 デジタル化の加速によって、動画やニュースの選択肢は加速度的に増えている。そのため、多くの選択肢から自分に合うものを選ぶことは容易ではない。選択肢が多いほど、何を選べばよいか迷い、結果として意思決定は難しくなる。

 TikTokは、ユーザーの関心の高いコンテンツを次から次に表示する。選択を省けるメリット、楽しい状況を続けようとする現状維持バイアスにより、TikTokは米国で1億7000万人ものユーザーを獲得し、今なお成長している。

 ユーザーの急拡大を背景に、TikTokの経済的影響も大きくなっている。「米国の中小企業に対して、TikTokは242億ドル(約3兆7000億円)もの需要を生み出した」との試算もある。これは米国の実質GDP(国内総生産)の約1%に当たる。「米国の労働市場で、TikTokは470万件の雇用を創出した」(24年)との推計もある。「TikTokが何らかの形で事業の拡大に寄与した」と回答した事業者は、全体の74%に達した。