結果を重視するか
プロセスを重視するか

 ジャンケンという手法の是非はさておき、ここで六太が何よりも大切にしたかったのは、5人で共有した「楽しかった2週間」というプロセスです。

 学生時代、友人たちをシャロンの天文台に誘ったとき、「あんな不気味なとこ誰が行くかよ」「星なんて見て何がうれしーんだよ」「ただの光る点だし」と断られた経験を持つ六太にとって、5人との出会いは「誘ったら喜んでついて来てくれそうな連中が…ここにいたんだ」という、感動を与えてくれるものでした。

 54歳という年齢的に不利な条件であった福田の弱みに気づいていながら、消去法で彼を除外しようとしなかったのも、福田とのプロセスを大切にしておきたかったから。

 六太の性格からすると、福田の弱みを指摘した結果、福田が候補から外されたりしたら、たとえそれが全員一致の意見であったとしても、この先ずっと罪悪感を抱き続けると思います。そうなれば、今のような関係は築けていなかったでしょう。

 実際、管制室のスタッフから、「2人を選び終えたあと、すぐにあのなかで次に5人で会う打ち上げの約束を交わしたのは――A班だけです」と言われていることからも、チームの仲間意識はどの班よりも強かったことがわかります。

 B班にとって重視すべきなのは最初から「結果」だったので、「一番ふさわしい人間を選ぶ」ために点数制を選び、最後までそれを貫き通しました。

 確かに、頭脳明晰な賢者風タイプが集まったB班では、誰もが納得できる最も公平な方法です。彼らにとっては、どんなに楽しい時間を一緒に過ごせたとしても、ジャンケンで決めるという選択肢は絶対に出てこないのではないかと思います。

 結果を重視するか、プロセスを重視するか。それによって捉え方は変わってきます。

 東京から大阪に新幹線で移動するとして、大阪に到着するという結果を重視するのならば、たとえ通路側の窓のない席しか空いていなくても、一番早い便の『のぞみ』を選ぶでしょう。

 逆に、大阪までのプロセスを重視するのであれば、窓際の席で景色を楽しんだり、あえて『ひかり』や『こだま』を乗り継いだりと、別の選択肢が出てきます。

 自分たちのチームは今、どちらを重視しているのか。ちょっと立ち止まって、考えてみるのもいいかもしれませんね。

宇宙を語り合える仲間との出会いや、共に過ごした時間を大切にしようとした六太。同書より転載。(c)小山宙哉/講談社 拡大画像表示