過去にとらわれず未来を描く
「3ボックス理論」においてデザインが果たす役割
Photo by YUMIKO ASAKURA
勝沼 bathtopeにも、製品の企画段階からデザイナーが関わっているということですね。
瀬戸 製品企画、設計、デザインそれぞれの担当者がワンチームとなって作った製品です。最初にあったのは、先ほどお話しした浴槽へのニーズの変化に対する危機感です。従来の浴槽に固執していたのでは将来のビジネスが成り立たなくなってしまう。では、自分たちは何をすべきか――。そんな意識から生まれた製品です。
bathtopeに限らず、そうした開発をする上での意識の基盤となっているのが、LIXILの社員の多くが研修を受けて身に付けている「3ボックス理論」です。これは、Tuckビジネススクールのビジャイ・ゴビンダラジャン教授が提唱する、文字通り三つの箱でイノベーションを説明する理論です。
一つ目の箱には「今の強み」が、二つ目の箱にはその中で「捨てるべき要素」が、三つ目の箱には「未来の新規事業」が入っている。それぞれの箱は、「現在」と「過去」と「未来」に該当する。未来は現在を否定するものになるかもしれませんが、三つ目の箱を生み出し続けないと、一つ目の箱はどこかでコモディティー化してしまいます。
現在、LIXILでは三つ目の箱のプロジェクト、つまりこれまでの成功体験を否定して未来をつくるプロジェクトが数多く進行しています。
勝沼 未来を構想することは、まさにデザインの役割といえると思います。未来のユーザーや社会にどういう価値を届けるのか。そんな視点で三つ目の箱の中身を考えていくということですよね。
瀬戸 三つ目の箱とデザインは密接に結び付いています。企業には目指すべきノーススター(北極星)が必要であるといわれます。私たちが目指すノーススターは「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパスに表現されています。それを実現するに当たって、現在のビジネスモデルが時代遅れになっていたり、生産アセットが過剰になっていたりするのであれば、思い切って捨てていかなければなりません。これは私の代で終わることではなく、ノーススターを目指す上で終わりのない取り組みだと思っています。







