ところが1カ月ほど前から、週に2日は「残業だ」と言って夜中の1時に帰ってきたり、寝かしつけを頼んだはずの子どもが大泣きしているので見に行くと稔さんの姿はなく、電話をかけると「眠れないから散歩していた」と、これまでの稔さんからは考えられない行動をするようになったのです。

夫が出してきた
離婚協議書の驚くべき内容とは?

 そして2週間前、稔さんは一方的に離婚を切り出し「離婚協議書」を突きつけてきたのです。

<離婚協議書の内容>
・妻(美緒さん)のモラハラによってうつ病を発症したため、婚姻関係を続けられない。仕事も手につかず社会的立場を著しく毀損(きそん)されたため、妻に慰謝料を請求する。
・子どもの親権は渡すが、養育費は慰謝料分を差し引く形で、相殺する。
・2カ月以内に離婚届を提出することを要求する。

 うつ病を発症したとの医者の診断書も添えられていました。

 美緒さんは「『何がモラハラなの?』と何度尋ねても育児や家事でイライラされ、無言の圧力がキツくて家に居場所がない、仕事にも身が入らない、ずっと一緒にいられないの一点張りで、後は黙ってしまうんです。確かにイライラして強い態度はあったと思いますが、モラハラになるとは到底思えません。お互いさまだと思うんです」

 稔さんは3年ほど前に半年間、職場の人間関係でうつ病を発症して休職したことがあり、美緒さんも夫の精神的な不調には気を使ってきました。しかし、復職後は治療をしておらず、この主張はあまりにも一方的で容認できるものではありませんでした。

 離婚を切り出して以降、稔さんは育児や家事をまったく放棄し、自室に引きこもるようになりました。子どもたちの保育園の送迎、食事、入浴、寝かしつけは、仕事をしながら美緒さんが全て一人でこなしていました。

 体力的にも精神的にも限界を迎えた美緒さんは、仕事中や通勤中も気を抜くと涙が止まらない状態になっていました。

「どんどん感情がコントロールできなくなっていることを実感しましたし、こめかみにジンジンする痛みも出るようになり、夜眠ることもできなくなり、このままでは自分が壊れてしまうと思いました」

 そんな極限状態の美緒さんに、追い打ちをかけるような現実が降りかかってきました。