私のもとに来られるクライエントとお話しさせていただく実体験では、他責がクセとして固着していく要因には、大きく2つの心理があると考えています。

(1)「合理化」一辺倒の防衛機制

(2)過剰な自己保護

 1つずつ詳しく見ていきましょう。

 私たちは、不安・怒り・悲しみといった不快な感情に向き合ったとき、それらを回避したり弱めたりすることで、精神的な安定を保つという心の調節機能を無意識に働かせます。

 この働きを、精神分析医であるフロイトは「防衛機制」という概念で提唱して整理しました。

「合理化」一辺倒の防衛機制が
他責思考の固着要因となる

 代表的な防衛機制としては、以下のものがあります。

抑圧……いじめに遭っていた時期のことをほとんど覚えていない、気が乗らない約束を忘れてすっぽかしてしまうなど、自分にとって受け入れがたい感情を無意識に抑え込むこと。

昇華……ツラかった体験を自虐ネタとしてお笑いや芝居に変える、そのときの感情を絵画や映画などの芸術作品で表現する、執筆や講演活動といった啓蒙活動を行ない、自分と同じような思いをする人をつくらないようにするなど、社会的に価値がある方向に向けること。

知性化……最近眠れなくてツラいから、不眠を解消するために何か良い対処方法は何かないかと調べてみるなど、自身の不快な症状を緩和するために知識をつけること。

反動形成……嫌いな人に対してあえて友好的に接する、怒りが強いときにあえて怒りの対象に丁寧に接する、悲しいときに笑ってみるなど、自分の素直な感情と反対のことをすることで自身の衝動性や感情を抑制すること。

隔離……親しい人が亡くなったのに泣かない、怒りが湧いても顔に出さないなど、思考や観念と行為を切り離してしまうこと。

否認……仲が良かった友達がネガティブな事件を起こしたときに「自分は彼とは仲良くなかったから知らない」と言ってしまう、アルコール依存症だと診断を受けたのに、「自分は病気なんかじゃない」と否定するなど、受け入れたくない現実や感情を無視してしまうこと。

合理化……あの洋服が欲しいけれど、まだ自分の年齢では似合わないなどと考えて、自分を納得させること。

打消し……相手を非難したあとで必要以上にほめる、喧嘩をした翌日にプレゼントを買ってくる、浮気相手と会ってきた後に本命恋人に優しく接するなど、過去の思考や行動の罪悪感を、それと反対の行動をすることで打ち消そうとすること。