「私が責任を取る」という上司が実はダメ上司である理由写真はイメージです Photo:PIXTA

ビジネスの現場で、何が起きても「自分の責任だ」と捉える姿勢は素晴らしいとされている。心構えとしては立派に見えるが、過剰な「自責至上主義」は弱点にもなる。その理由を解説しよう。(キャスター取締役 石倉秀明)

「自責」はそんなに素晴らしいことか?

 ビジネスで頑張っている人ほど「自責」が好きである。何が起きても自分の責任だと捉える、自分でもっと何かできたのではないかと考える姿勢は素晴らしいとされているし、基本だとされている。

 私が以前所属していた会社でも、「自責至上主義」とも言える考え方は蔓延(まんえん)していた。読者も聞いたことがあるかもしれない言葉で、「雨が降っても自分のせい」というものがある。何が起きても自分のせいと考えるくらい当事者意識を持て、ということの例えとしてよく使われる比喩である。

 逆に「他責」は、良くないものの典型だ。

 何かのせいにする、他人のせいにする姿勢は最悪だとされている。確かに、他責は良くない。それはわかる。

 ただ、本当に「自責」はそんなに素晴らしいのだろうか。すべてを「自責」で捉えることが、ビジネスパーソンとしての正しい姿なのだろうか。

 私は、「自責」は思考停止のキーワードだと思っている。

 ビジネスをしていてミスが起こったり、トラブルが起こることは往々にしてある。社員が辞める、クレームが発生する、予定していた契約が失注になる、取引先からの入金が遅れる……そんなことが毎日起こる。こういったトラブルが起きた原因は自分にあり、自分がもっと何かできたのではないか、と考えるのが「自責」だ。

 ただ、この「自責」には大きな弱点がある。

 それは何か。