競合を理解する際に重要になるのは、相手が課題と解決策のどちらを発見しているのか見極めることです。競合が新しい課題を掘り当てたのであれば、その課題が自社のターゲットにも共通するかを検証する必要があります。それがもし共通するのであれば、自社としても無視できません。
一方、同じ課題を前提にしている場合でも、解決策のアプローチは企業ごとに異なり得ます。自社ならではの強みを活かした別の解決策を提示できるならば、わざわざ同じ武器で戦う必要はないのです。
この視点は、マーケティングでよく使われるSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)の考え方に通じます。「セグメント」(市場をどのように切るか)が異なるなら、そもそも競合にはなりません。「ターゲット」(切った市場の中で誰を狙うか)が異なるのであれば、そのターゲットに合わせて導入された機能をまねる必要はありません。むしろ、自社のターゲットが誰で、その人たちがどのような進歩を真に求めているのかを掘り下げることが、プロダクトを磨く近道になります。
さらに、STPの最後のPにあたる「ポジショニング」を整理することで、自社と競合の立ち位置は一層明確になります。ポジショニングマップは、顧客にとって重要な2つの軸を設定し、その軸上に自社と競合他社を配置することで、市場におけるそれぞれの相対的な位置関係を視覚的に把握するツールです。比較表では機能の多寡が目立ちますが、ポジショニングマップは価値の方向性を示してくれます。
トヨタに学ぶ「STP戦略」
ポジショニングに見るレクサスの独自性
トヨタ自動車のケースで考えてみましょう。自動車市場は高級志向、実用・大衆志向、走り志向、環境志向といった複数のセグメントに分けられます。その中でレクサスは高級志向を狙い、上質な体験やブランド価値を求める層をターゲットにポジショニングしています。一方でカローラは実用・大衆志向を、プリウスやMIRAIといったモデルは環境志向をカバーし、トヨタ全体の戦略に奥行きを与えています。







